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[学会情報]米国心臓協会学術集会(AHA)2008
on-site interview with Expert
McMurray氏にLate-Breaking Clinical Trialsを聞く
interview with John McMurray, MD

John McMurray, MD
McMurray氏にAHA2008の会場で聞いた

■I-PRESERVE: 心機能の変化をみることで,より詳細な説明が可能になる■

HF-REF,つまり“収縮性心不全”に関しては,CHARM,Val-HeFT試験などで, ACE阻害薬の投与の有無に関わらず,ARBが有用であることが示されていますが, 今回,HF-PEF患者において,ARBによる同様の効果は認められませんでした。しかしながら,I-PRESERVEはHF-PEFを対象とした最大規模の試験であり,イベントの発生率・種類,自然歴など多くの情報をわれわれに与えてくれました。

プレゼンテーションでははっきり示されませんでしたが,患者登録に際して, ACE阻害薬が投与されている患者が施設ごとに1/3以下になるよう制限を設けました。そのため,西欧諸国,米国からの登録数が非常に限られてしまいました。対象となる患者群において,ACE阻害薬未投与の患者をみつけることが非常に困難だったのです。

今後,この疾患についてどのような研究を行っていくべきか,私も含め,多くの研究者たちに考える機会を与えてくれたと思います。

CHARM-preserved試験のデータを注意深くみると,EFが40%未満の明らかな低下と55%以上の明らかな正常の中間,いわゆる軽度の収縮機能不全症例において,ARBによるベネフィットが認められているように思います。CHARM-preserved試験と比べると,I-PRESERVE試験ではより正常EFに近い症例が対象となっています。このわずかな患者背景の違いが重要なのかもしれません。“HF-PEF”といっても,どこを境界とすべきか,まだ明らかになっていないのです。

来年には心エコーサブ解析の結果を報告する予定です。ベースライン時には患者の80%が拡張機能不全を呈していましたので,この解析により追跡期間中の心機能の変化,イルベサルタンの効果など,より詳細な説明が可能になると思います。

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Profile
John McMurray, MD
Professor of Medical Cardiology, the University of Glasgow, UK
McMurray氏はHeart Failure Association of ESCの次期会長,I-PRESERVEの試験責任医師であり多くの臨床研究を手がけている。

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