McMurray氏にAHA2008の会場で聞いた |
■I-PRESERVE: 心機能の変化をみることで,より詳細な説明が可能になる■
HF-REF,つまり“収縮性心不全”に関しては,CHARM,Val-HeFT試験などで, ACE阻害薬の投与の有無に関わらず,ARBが有用であることが示されていますが, 今回,HF-PEF患者において,ARBによる同様の効果は認められませんでした。しかしながら,I-PRESERVEはHF-PEFを対象とした最大規模の試験であり,イベントの発生率・種類,自然歴など多くの情報をわれわれに与えてくれました。
プレゼンテーションでははっきり示されませんでしたが,患者登録に際して, ACE阻害薬が投与されている患者が施設ごとに1/3以下になるよう制限を設けました。そのため,西欧諸国,米国からの登録数が非常に限られてしまいました。対象となる患者群において,ACE阻害薬未投与の患者をみつけることが非常に困難だったのです。
今後,この疾患についてどのような研究を行っていくべきか,私も含め,多くの研究者たちに考える機会を与えてくれたと思います。
CHARM-preserved試験のデータを注意深くみると,EFが40%未満の明らかな低下と55%以上の明らかな正常の中間,いわゆる軽度の収縮機能不全症例において,ARBによるベネフィットが認められているように思います。CHARM-preserved試験と比べると,I-PRESERVE試験ではより正常EFに近い症例が対象となっています。このわずかな患者背景の違いが重要なのかもしれません。“HF-PEF”といっても,どこを境界とすべきか,まだ明らかになっていないのです。
来年には心エコーサブ解析の結果を報告する予定です。ベースライン時には患者の80%が拡張機能不全を呈していましたので,この解析により追跡期間中の心機能の変化,イルベサルタンの効果など,より詳細な説明が可能になると思います。