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[学会情報]米国心臓病学会学術集会(ACC)2009&i2 Summit
(2009年3月29日~31日 in オーランド)
編集部が選ぶ注目トライアル
Late-Breaking Clinical Trials
<Late-Breaking Clinical Trials I>
Pre-RELAX-AHF Study Relaxin, a Novel Treatment for Acute Heart Failure: The Results of the Pre-RELAX-AHF Study
リラキシン: 急性心不全に対する新規薬剤: Pre-RELAX-AHF Study

John R. Teerlink
John R. Teerlink
(Veterans Affairs Medical Center, University of California, San Francisco,米国)

【3月29日・オーランド】
試験背景/目的 米国において,急性心不全による入院は過去30年間で3倍に増加し,現在,年間100万件以上と報告されている。急性心不全患者では,90%以上が呼吸困難を呈し,その改善は臨床的に重要なターゲットである。

女性ホルモンのリラキシンは妊婦の血行動態に働き,血管の拡張作用,心臓の圧力低下作用をもつことから,心不全患者において,呼吸困難の改善に有用ではないかと考えられ,Pre-RELAX-AHF試験が企図された。

この試験はリラキシンの4つの用量とプラセボとを比較した前向きランダム化比較,第IIb相試験で,急性心不全患者にリラキシンを静注し,その安全性と最適な用量を検討することを目的としている。

3月29日のACC09 LBCT Iにおいて,John R. Teerlink氏(University of California)が試験の結果を発表した。

エンドポイントは以下のとおり:(1)呼吸困難の改善,(2)入院中—心不全の徴候・症状の改善,心不全の悪化,入院期間,腎機能の変化,(3)退院後~60日後の退院状態での生存,60日後の心血管死亡+心不全または腎不全による再入院,180日後の心血管死亡など。

試験プロトコール Pre-RERAX-AHF試験の参加施設は8ヵ国,54施設。対象は18歳以上,急性心不全発症後16時間以内の患者で,収縮期血圧>125mmHg,腎機能障害を有する(クレアチニンクリアランス 30~70mL/分)患者に限定した。

発熱(>38℃),急性造影剤誘発腎症/最近の造影剤の服用,変力作用薬/昇圧薬/血管拡張薬(低用量硝酸薬を除く)の静注を実施中(または予定),循環補助装置/呼吸補助を使用,重篤な肺疾患/肝疾患,重度の狭窄弁疾患,45日以内の急性冠症候群,トロポニン値>正常上限値の3倍の症例,最近の臓器移植歴(または予定),30日以内の大手術,は除外された。

フロセミド 40mgを静注した後,プラセボ群に61例,リラキシン10群(リラキシン 10μg/kg/日)に40例,リラキシン 30群(30μg/kg/日)に42例,リラキシン 100群(100μg/kg/日)に37例,リラキシン 250群(250μg/kg/日)に49例がランダムに割付けられ,48時間かけて投与し,180日まで追跡している。

試験結果 急性心不全発症からランダム化までの平均時間は8.4時間(中央値6.6時間),試験薬はさらにその平均1.8時間後に投与開始した。

48時間後,ベースライン時の収縮期血圧>140mmHgの症例では,リラキシン群ではプラセボ群に比し有意な降圧効果が認められた(P =0.04)。一方,≦140mmHgの症例ではプラセボ群との差は認められていない。

投与24時間以内において,呼吸困難が改善を報告した患者の割合はリラキシン 30群でもっとも多く,40%にみられ(P =0.04 vsプラセボ群),この効果は14日後も継続していた。リラキシン30群では,いずれの入院中のエンドポイントに関しても良い結果を示し,さらに180日後の心血管死亡においても4群間でもっとも発生率が低かった(ハザード比0.00,95%CI 0.00~0.98,P <0.05 vs プラセボ群)。

低血圧や腎障害などの有害事象はリラキシン 250群でもっとも多く発生する傾向にあった。これらの結果を踏まえ,Teerlink氏は「もっとも効果の高かったリラキシン 30μg/kg/日によってさらなる研究を行う予定」と今後の方針を述べた。

パネリストのMihai Gheorghiade氏(シカゴ,米国)は,ランダム化までの時間が中央値6.6時間と非常に短時間であることに触れ「これは血圧や腎機能がまだ良い状態で,症状も多く,介入がなされていないことを意味しており,非常に重要なポイント」と述べ,「急性心不全の試験実施における新たな扉を開いた」と賞賛した。

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