Eprotirome as a Novel and Physiological Approach to CVD Risk Reduction: Beneficial Effects on Lipoprotein Levels When Added to Statin Therapy |
Bo Angelin (Karolinska University Hospital, ストックホルム,スウェーデン) |
【3月29日・オーランド】
試験背景/目的 eprotiromeは甲状腺ホルモン受容体アゴニストで,肝臓の甲状腺ホルモンに作用し,コレステロールの取込みと胆汁への排出を増加させることで,血中脂質レベルを低下させることが期待されている。通常,甲状腺ホルモン受容体アゴニストは視床下部・下垂体・甲状腺系,心臓,骨,骨格筋など肝臓以外の器官・組織にも作用するが,eprotiromeは肝臓に選択的に働く。
そこで,スタチン治療中の患者にeprotiromeを追加投与した際,さらなる脂質低下作用が得られるかどうかを検討するランダム化比較試験が実施された。
3月28日のLBCT IIにおいて,Bo Angelin氏(Karolinska University Hospital)がこの試験の結果を発表した。
試験プロトコール 対象は原発性高脂血症患者のうち,すでにスタチン(シンバスタチン40mg/日以内,アトルバスタチン10mg/日以内)投与中で,LDL-C>116mg/dL,甲状腺機能正常,NYHA分類≦2の症例。
4週間の食事療法によるrun-in期間の後,プラセボ群に49例,eprotirome 25群に48例,eprotirome 50群に48例,eprotirome 100群に44例が割付けられた。
いずれの実薬群もeprotirome 25μg/日から投与を開始した。eprotirome 50群と100群では,2週後に50μg/日に増量し,eprotirome 100群では4週後に100μg/日に増量し,12週間投与した(追跡期間は16週間)。
試験結果 平均年齢はプラセボ群61歳,eprotirome 25群59歳,eprotirome 50群59歳,eprotirome 100群60歳。スタチンの内訳は,いずれの群でもアトルバスタチンよりもシンバスタチン投与患者のほうが多かった。
投与期間中,eprotiromeは用量依存性のLDL-C低下作用を示した(プラセボ群 −6%,eprotirome 25群 −21%,eprotirome 50群 −26%,eprotirome 100群 −32%)。さらに,non-HDL-C,Apo-B,トリグリセリド,Lp(a)に関しても,いずれのeprotirome群もプラセボ群に比し,有意な低下を示し,その効果はeprotirome 100群でもっとも高かった。
eprotiromeは肝臓でのT4の貯蔵量を減少させたものの,TSHやfT3には影響を与えなかった。心拍数の増加,心電図異常,骨代謝,骨格筋に対する影響もみられなかった。肝酵素については,2例でALTの増加(正常上限値の3倍以上)を認めたが,ビリルビンに対する一貫した変化はみられなかった。安全性のプロファイルについて,プラセボとeprotiromeとの間に違いもみられなかった。
Bo Angelin氏はディスカッションのなかで「この試験を含めて3つのproof-of-concept試験を行い,約300例が参加しているが,eprotiromeではこの種(甲状腺ホルモン受容体アゴニスト)の薬剤で考えられるような有害事象は確認されておらず,安全性について期待がもてる」と強調し,「安全性を明確なものとするために,十分なサンプルサイズを用いた臨床試験の実施が必要」と述べた。