THERAPEUTIC RESEARCH On-line

Alan L. Hinderliter （University of North Carolina, 米国）

【3月30日・オーランド】
試験背景／目的　DASH食は，飽和脂肪やコレステロール，総脂肪を控え，果物や野菜，無脂肪あるいは低脂肪乳を積極的に摂取する食事療法であり，優れた降圧効果をもつことが知られている。DASH食と運動による減量指導を追加すると，さらなるベネフィットをもたらすことが期待されるが，実際の有用性は明らかにされていない。

そこで，血圧が高めの肥満者を対象に，DASH食による介入（DASH群）と，DASH食と運動による減量（DASH＋WM群）を組み合わせた介入の降圧効果を検討する，ENCORE試験が企画された。この試験は，DASH群，DASH＋WM群，通常ケア群の3群を比較したランダム化比較試験である。

3月30日のACC.2009 LBCT Vにおいて，Alan L. Hinderliter氏（University of North Carolina）がこの試験の結果を発表した。

一次エンドポイントは安静時の血圧。
二次エンドポイントは自由行動下血圧，血管スティフネス（脈波伝播速度），内皮機能（flow mediated dilation: FMD），左室重量（心エコー）。

試験プロトコール　対象は，＞35歳，BMI が25～40kg/m²，デスクワーク中心で定期的な運動を行っていない，血圧が130～159/85～99mmHgの症例。

降圧薬服用中，二次性高血圧，心疾患，糖尿病，慢性腎臓病の症例は除外された。

DASH群では，体重を維持するようにデザインされたDASH食摂取の指導を実施。また，DASH＋WM群では，DASH食と減量に向けた認知行動の指導のほかに，週3回，監視下での運動を指導した。以上の介入を16週間実施。

最終的にDASH＋WM群に49例，DASH群に46例，通常ケア群に49例が割付けられた。

試験結果　平均年齢はDASH＋WM群52.3歳，DASH群51.8歳，通常ケア群52.0歳。BMIは33.5kg/ m²，32.8kg/ m²，33.0kg/ m²，血圧は139/86mmHg，138/86mmHg，138/86mmHg。

1日の摂取カロリーは，1648kcal，1962kcal，2095kcalであり，試験終了時の体重は通常ケア群に比べDASH群が有意に低く，また，DASH群に比べDASH＋WM群が有意に低かった。

16週間後の安静時の血圧は，介入群（DASH群，DASH WM群）は通常ケア群より有意に低く（SBP，DBPともにP ＜0.001），さらにDASH WM群はDASH群に比べ有意に低かった（P ＝0.023，P ＝0.048）。各群のベースラインからの血圧変化については，DASH＋WM群で16/10mmHgの低下，DASH群で11/8mmHgの低下，通常ケア群では3/4mmHgの低下がみられた。

自由行動下血圧についても，安静時の血圧と同様に，DASH＋WM群はDASH群よりも有意に低い結果が得られた。脈波伝播速度は介入群で通常ケア群に比べ有意に低く，DASH＋WM群はDASH群に比べ有意に低かった。FMDは，介入群は通常ケア群に比べ有意に高かったが，両介入群間では有意差なし。LVMIについては，通常ケア群と介入群とで有意差はみられなかったが，DASH＋WM群はDASH群より有意に低かった。

以上をまとめると，DASH食の指導に減量指導を組み合わせると，DASH食のみを指導した場合に比べ血圧がさらに低下し，心血管系にも好ましい影響をもたらす可能性が示された。

Alan L. Hinderliter氏は，「DASH食のアドヒアランスが92％，運動のアドヒアランスが90％と非常に高かったことが減量，そして心血管系へのベネフィットにつながった」と強調した。パネリストのSteven E. Nissen氏は今回の結果を受け，「DASH食と運動療法の導入によって，現在，高血圧患者に処方されている降圧薬の数を減らすことができるかもしれない」と述べ，「われわれは今後，今回のようなDASH食と運動療法を広く普及させる方法を考えていく必要がある」と前向きなコメントを述べた。