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[学会情報]米国心臓協会学術集会(AHA)2009
EXPERT COMMENT
Nattel氏に聞く — RecordAF Registry
リズムコントロールとレートコントロールの直接比較は適切ではない
Nattel氏
Nattel氏に電話インタビューにこたえてもらった

RecordAF登録研究は,医師によりリズムコントロールまたはレートコントロールが選択された心房細動(AF)患者について,それぞれの特徴とアウトカムの違いを明らかにした,非常に興味深い研究です。

この研究により,レートコントロールを選択された患者では,リズムコントロールの患者よりも心不全,糖尿病,弁膜症などの合併例や,持続性AF例が多く,ベースライン時の心拍数も多いことが示されました。医師が治療戦略を検討する際には,リズムコントロールによって症状を改善できるかどうかが判断の基準となるので,基本的に重篤な患者ではレートコントロールが行われ,発作性AF患者ではリズムコントロールが選択される傾向がみられます。

循環器科ではリズムコントロールを選択するケースが多く,医師はレートコントロールよりもリズムコントロールのほうが治療が成功しやすいという感覚をもっていますが,すべての患者においてレートコントロールよりもリズムコントロールが優れているというわけではなく,単に,リズムコントロールに向いている患者にリズムコントロールが選択され,その結果,治療が成功したにすぎないのです。

さらに,発作性AFについては,エピソードの発生頻度が低いため,これらの患者では抗不整脈薬を投与しなくても「治療成功」基準を満たしていた可能性もあります。

一方で,レートコントロール群の患者において,永続性AFへの進展率が高いことが示されましたが,このことは,医師がレートコントロールを選択した場合,持続性AFの予防はそれほど重視されていないことを表しています。

このように,リズムコントロールとレートコントロールでは患者背景や「治療成功」基準が大きく異なるため,この研究において両者を直接比較するのは適切ではないといわざるをえません。

<→RecordAF Registry詳報へ>

Profile: Stanley Nattel, MD
Department of Medicine and Research Center, Montreal Heart Institute and Université de Montréal, Montreal, Quebec, Canada

Nattel氏は心臓の電気活動,および心房細動を含む不整脈を専門とし,現在までの発表論文は300以上。モントリオール心臓研究所リサーチセンター前所長で,Heart Rhythm誌ほか多数のジャーナルの編集委員をつとめている。

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