ACTIVE I | Atrial fibrillation clopidogrel trial with irbesartan for prevention of vascular events; Preliminary results of ACTIVE I trial |
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Comment: | A John Camm, M.D. | イルベサルタンによる降圧が,心不全入院を減少させたのではないか |
Maurits A. Allessie, M.D. | 心房細動,心不全を慢性的かつ進行性の疾患として捉え,早期に治療を開始することが重要 | |
Stanley Nattel, M.D. | 心房細動そのものに対する効果がどうであったかが,もっとも必要な情報 | |
関連記事 | 座談会 心房細動患者における心血管病の予防 ~いつ,どのように治療するか |
Salim Yusuf, MD. (McMaster University, カナダ) |
【9月1日・バルセロナ】
試験背景/目的 ACTIVE(Atrial Fibrillation Clopidogrel Trial with Irbesartan for prevention of Vascular Events)は,脳卒中高リスク心房細動(AF)患者を対象に,心血管イベントの予防に取り組む3試験で構成されるプログラムであり,抗凝固療法および抗血小板療法について検証した2試験(ACTIVE W,ACTIVE A)については,すでに結果が発表されている。今回のACTIVE I は両試験に登録されたSBP>110mmHgの患者を対象として実施された。
AF患者における最大の関心事は脳卒中予防であるが,AF患者では心不全の合併率が高いことから心不全も重要な治療ターゲットとなる。脳卒中,心不全ともに血圧の影響が大きく,また高血圧自体がAFの強力な危険因子であることから,ARBイルベサルタンを用いてAF患者の脳心血管アウトカムを改善できるかどうかを検証するのがACTIVE I のねらいである。
9月1日のHot Line IIIにおいて,Salim Yusuf氏(McMaster University)がこの試験の結果を発表した。
一次エンドポイントは二つ設定され,「脳卒中+心筋梗塞+血管死」の初発と,「脳卒中+心筋梗塞+血管死+心不全による入院」の初発である。
試験プロトコール ACTIVE I 試験には33ヵ国から639施設が参加。対象は,脳卒中危険因子*を1個以上有するAF患者で,収縮期血圧>110mmHg,ARB未投与の9,016例。対象者はイルベサルタン群とプラセボ群に割付けられ,平均4.1年間追跡された。
*75歳以上,高血圧,脳卒中/一過性脳虚血発作(TIA)の既往,左室駆出率45%未満,末梢性動脈疾患,55–74歳で冠動脈疾患あるいは糖尿病を有する。
試験結果 登録時の患者背景は次のとおり。平均年齢70歳,女性39%,永続性AF(イルベサルタン群66.0%,プラセボ群64.4%),発作性AF(19.6%,20.5%),持続性AF(14.3%,14.9%),洞調律維持率(18.7%,19.6%),CHADS2リスクスコア(1.99,1.97),血圧(138/83mmHg,138/82mmHg)。併用薬をみると,ACE阻害薬が約6割の患者に投与されているほか,β遮断薬,利尿薬も5割を超える患者に投与されている。Ca拮抗薬は27%,抗不整脈薬は23%,ジゴキシンは35%の患者に投与されていた。アスピリンの使用率は約60%,ビタミンK拮抗薬(ワルファリンなど)は38%(ただし,抗凝固薬,抗血小板薬の投与は,ACTIVE WおよびACTIVE Aのプロトコールによるもの)。
2年後の時点では,約90%の患者が降圧薬(試験薬を除く)を服用し,イルベサルタン群では,平均2.00剤,プラセボ群では平均2.15剤服用していた。また,登録時からの血圧の変化はイルベサルタン群で−6.84/−4.51mmHg,プラセボ群で−3.93/−2.63mmHgで,群間差は約3/2mmHgとわずかであった。Yusuf氏は,このことについて「両群ともに,すでに十分な降圧治療が行われていたため」と説明した。
一次エンドポイントの一つ,「脳卒中+心筋梗塞+血管死」の年間発生率は,両群ともに5.4%(ハザード比[HR]0.99)となり,観察期間中のイベント発生率の推移はほぼ同一であった(95%信頼区間[CI] 0.91~1.08,P =0.846)。もう一つの一次エンドポイントである「脳卒中+心筋梗塞+血管死+心不全による入院」の年間発生率は,イルベサルタン群7.3% vs プラセボ群7.7%となり,イルベサルタン群のほうが少なかったが,その差は有意ではなかった(HR 0.94,95%CI 0.87~1.02,P =0.122)。
二次エンドポイントとして,脳卒中,心筋梗塞,血管死,心不全による入院のそれぞれについて検討が行われ,心不全による入院でイルベサルタンにより14%の低下がみられ,この差は有意なものであった(2.7%/年 vs 3.2%/年,HR 0.86,95%CI 0.76~0.98,P =0.018)。
また,関連する項目として,あらかじめ設定されたエンドポイントではないが,心血管関連の入院についても検討が行われ,イルベサルタンは,入院回数(3,817回 vs 4,059回,P =0.003),総入院日数(36,440日 vs 39,971日,P =0.0000)ともに有意に減少させた。
心不全による入院の減少などについて,Yusuf氏は「わずかではあるが両群の血圧に差がみられたことから,イルベサルタンによる積極的な降圧治療がこうした有効性につながった可能性も考えられる」とコメントした。
サブグループ解析では,いずれの一次エンドポイントに関しても,ACE阻害薬の服用/非服用による違いはみられなかった。一方,β遮断薬服用/非服用に関しては有意な交互作用が認められ,β遮断薬を服用していない患者でイルベサルタンの有用性が認められた(「脳卒中+心筋梗塞+血管死」でP =0.0093,「脳卒中+心筋梗塞+血管死+心不全による入院」でP =0.0001)。