安全性に関しては,さらに多くの患者で,より長期間の検討を行う必要がある |
Wijns氏にESC2009会場でインタビューにこたえてもらった |
■ISAR-TEST-4の結果を受けて
ISAR-TEST-4のインベスティゲータに対し,その努力に賞賛を送りたいと思います。この試験は「薬剤溶出ステントに生分解性ポリマーを用いたDES(BP-DES)は,薬剤放出後も血管壁に残存する永久的ポリマーを用いたDES(PP-DES)と比較して,優れているか?」という疑問に適切に答えるためにデザインされ,きちんとしたサンプルサイズを用いて実施されています。
PP-DESが2種類使われていましたので,それぞれの結果を個別にみてみたいと思いました。
一方で,課題もいくつかあります。ISAR-TEST-4は血管造影試験と臨床試験の中間に位置する試験といえますが,血管造影の実施率に関して,3群間で違いがあったかどうかについて報告されませんでした。血管造影所見を試験に導入すると,再狭窄率や再血行再建術の割合が増大する傾向があることは明白ですので,結果を解釈する際にとても重要な情報になります。
また,今回の発表で,1年後のアウトカムが報告されましたが,血管造影に関しては, 6~8ヵ月後の結果であったことも忘れてはいけません。安全性に関しては,さらに多くの患者で,より長期間の検討を行う必要があると思います。
—発表者の Mehilli氏は,ESC記者会見の席で「BP-DESはPCIを実施する医師自ら,個々の患者に応じて薬剤を選択し,用量を設定できることが大きな利点の一つ」と述べている。そこで,この新しいコンセプトについて,Wijns 氏に感想を伺った。—
■医師がカテーテル室にて,患者ごとにBP-DESを作製していることについて
この新たな方法により「高リスクの患者には高用量を」といったカスタマイズが可能になるという点は,すばらしいと思います。ただし,懸念されるのは品質コントロールの問題です。基本的には,医師が企業からベアメタルステントを購入し,それをもとに薬剤溶出ステントを作製することになると思います。このプロセスにおいて,予測通りの有効性が保てるという確証がもてるでしょうか。われわれはDESにおいて悪魔は細部に存在することを学びました。つまり,動力学に関連するわずかな違いがアウトカムに影響を及ぼすということです。環境のわずかな変化が有効性に影響を与えないともかぎりません。この試験で得られた結果が再現性のあるものかどうか,薬力学的および血管造影上のエンドポイントにて確認することが非常に重要だと思います。測定値の標準誤差の比較も必要です。
もう一つ,法的責任に関する心配もあります。だれが,品質コントロールを保ち,有効性と副作用に対する法的責任を負うのか。 この方法は革新的方法です。それゆえ,こうした新しい問題ももちあがってくるのだと思います。