心房細動,心不全を慢性的かつ進行性の疾患として捉え,早期に治療を開始することが重要 |
Allessie氏にESC2009会場でインタビューにこたえてもらった |
■ACTIVE Iの結果をみて
ACTIVE I試験の一次エンドポイントの結果に差はつきませんでした。しかし,心房細動(AF)自体に対してどのような影響があったかというデータが示されていませんでしたので,この結果の解釈は非常に難しいと思います。
■ARBに期待された作用とその結果
ARBはAFに対して間接作用と直接作用により有効性を示すと考えられています。
心房は,スムーズかつ連続的に心室へ血液を送るために,非常に繊細で柔軟な構造をしています。一方で,このような構造のため,心房は脆弱であるともいえます。繊細で柔軟な構造のために,心拍数増大や血圧上昇などにより心室に負荷がかかり,収縮終期および拡張期の圧/容積が少しでも上昇すると,心房はすぐに拡張・伸展してしまいます。また,心房の線維化の影響も受けやすいのです。
ARBは血圧を低下させることで,心室の負荷を軽減し,収縮終期および拡張期の圧/容積の上昇を抑え,心房を保護します。これがAFに対するARBの間接作用です。また,ARBはレニン-アンジオテンシン系を遮断することで線維化を予防します。これがAFに対するARBの直接作用です。ただし,いちど線維化してしまった心房が元に戻る可能性は非常に低いと考えています。
このように,理論上,ARBはAFの一次予防において有用であると考えられています。しかし,ACTIVE Iの対象患者の多くは持続性AFあるいは永続性AFであり,ARBの有用性を示すには遅すぎたのではないでしょうか。ARBの効果を検証するのであれば,もっと早期の患者を対象に治療を開始すべきだったと思います。
■心不全による入院の減少について
発作性AF患者では,降圧によって心室負荷を軽減することで,心不全に対するベネフィットが認められたのかもしれません。しかし,イルベサルタン群とプラセボ群の降圧度の違いはわずかですので,降圧差によってすべてを説明できるとは思いません。
イルベサルタン群で,AF発作回数の減少,AF持続時間の短縮,長時間のAF発作の減少などが示され,それが心不全による入院の減少に繋がった可能性もあります。AFが数時間持続すると,心不全が発症するというのは,とても一般的なことです。しかしながら,今回,AFに関するデータが発表されませんでしたので,現時点では「なぜイルベサルタンは心不全による入院を減少させたか」という問いに明確に答えることはできません。
このような臨床試験の結果について考える際,ポジティブなベネフィットがあるかもしれないと考える一方で,楽観的になりすぎてもいけないと思います。
■RA系抑制薬の可能性
AF,心不全,およびそれらの合併症は,持続的な伸展やストレスが何年も継続した結果もたらされた慢性疾患です。これらを慢性的かつ進行性の疾患として捉え,早期に治療を開始することが重要です。これが私のメインメッセージです。
したがって,われわれはもっと早い段階で患者を見つけ出し,病態の進行を遅らせるように努力しなくてはいけません。ACE阻害薬やARBは,長期にわたり心房の負荷を軽減することで,AFあるいは心不全に対し,一次予防の役割を果たすと信じています。