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[学会情報]日本循環器学会2009
(2009年3月20~22日 大阪にて)
編集部が選ぶ注目トライアル
Late-Breaking Clinical Trials
<Late-Breaking Clinical Trials II>
COSMOS Coronary Atherosclerosis Study Measuring Effects of Rosuvastatin Using Intravascular Ultrasound in Japanese Subjects
日本人患者におけるロスバスタチンの冠動脈硬化に対する有効性: 血管内超音波を用いた検討(COSMOS)

試験背景/目的 欧米において,スタチンによる積極的な脂質低下治療により,血管内超音波(IVUS)でプラークの退縮がみとめられたとの報告がある。日本においても,スタチンによるプラーク退縮効果を評価したIVUS試験としてESTABLISH試験およびJAPAN-ACS試験があるが,いずれも対象は急性冠症候群である。

そこでCOSMOS試験では,コレステロール値が高い安定冠動脈疾患患者を対象に,ロスバスタチンのプラーク退縮効果を検討した。

この試験は第4相試験。多施設共同で実施され,単群でロスバスタチン投与前後を比較した。

3月22日のJCS2009 LBCT IIにおいて代田浩之氏(順天堂大学)がこの試験の結果を発表した。

一次エンドポイントは,プラーク体積の%変化。

試験プロトコール  対象患者基準は,1) 20~75歳,2) 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を要する慢性冠動脈疾患患者,3) 脂質異常症(未治療の場合はLDL-C≧140m/dLまたは総コレステロール≧220mg/dL,すでに治療中の場合はLDL-C≧100mg/dL,総コレステロール≧180mg/dL),4) PCIを要する75%以上の狭窄が1つ以上,かつ血管内超音波(IVUS)により確認された50%以下の狭窄が1つ以上。除外基準は,試験開始後72時間以内の急性心筋梗塞,NYHA分類III~IVの心不全など。

登録された214例に対し,LDL-C<80mg/dLを目標にロスバスタチン2.5mg/日から投与を開始し,必要に応じて漸増(最大20mg/日)。試験完了は126例(約60%)。

試験期間は76週間で,試験開始時,および76週後のフォローアップ時にIVUSまたは冠動脈造影(CAG)を実施してプラーク体積を測定した。

試験結果 患者背景は,平均年齢62.6歳,男性76.2%,BMI 25.0kg/m2となり,試験に先行して脂質低下薬が投与されていたのは73.0%,不安定狭心症は7.9%であった。また,最終的なロスバスタチンの平均投与量は16.9mg/日となった。

ベースラインから76週後にかけて,LDL-CおよびLDL-C/HDL-C比は有意に減少し,HDL-Cは有意に増加した(LDL-C: 140.2→82.9mg/dL[P<0.0001],HDL-C: 47.1→55.2mg/dL[P<0.0001],LDL-C/HDL-C比: 3.12→1.56[P<0.0001],TG: 147.8→130.3mg/dL[P=0.1639])。

プラーク体積の%変化(一次エンドポイント)は−5.07%(95%信頼区間−7.55~−2.59,P<0.0001)となり,ロスバスタチンの投与により有意なプラーク退縮がみとめられた。血管体積に有意な変化はみとめなかった(+0.76%,P=0.4673)が,血管内腔体積は+7.25%(P<0.0001)と有意な増加を示した。

サブグループ解析によると,プラーク体積の有意な低下は,先行する脂質低下薬治療の有無および狭心症のタイプ(不安定/安定)にかかわらずみとめられたが,BMIが25kg/m2以上およびHbA1cが6.5以上ではみとめられなかった。有害事象は,死亡0例,入院を要する重篤な有害事象は3例10件(貧血・血小板減少,好中球減少,肝機能障害・CRP上昇)。

代田氏は「日本人の安定冠動脈疾患患者を対象に,多施設共同試験としてスタチンによるプラーク退縮効果が初めて示された」とその意義を強調した。

コメントスピーカーの小宮山伸之氏(埼玉医科大学国際医療センター)は,「最強スタチンと呼ばれるロスバスタチンを使い,対象者の多くが安定狭心症でありながら有意なプラーク退縮効果が示されたというのは非常に有意義な結果」と評した。一方で,これまで急性冠症候群患者を対象とした先行研究では15%程度だったプラーク退縮率が,COSMOS試験では約5%と小さかったことを付し,「スタチンによる既治療率が約7割と高かったことがプラークの組織学的性質に影響していた可能性がある」と述べた。

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