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[学会情報]米国心臓協会(AHA)学術集会2010
(2010年11月13日~17日 in シカゴ)
編集部が選ぶ注目トライアル
Late-Breaking Clinical Trials II
<Late-Breaking Clinical Trials II>
ROCKET AF Rivaroxaban Once-daily oral direct factor Xa inhibition Compared with vitamin K antagonism for prevention of stroke and Embolism Trial in Atrial Fibrillation
非弁膜症性心房細動患者において,経口第Xa因子直接阻害薬リバロキサバンの脳卒中予防効果をワルファリンと比較する
Comment: Dr. Robert O. Bonow   ROCKET AF:高リスク患者にて非劣性が証明された価値ある試験
注:ROCKET AF試験の研究グループおよびBonow氏は,「AHAでの発表内容は,本年の10月24日に得られたばかりの研究データによる主要結果に過ぎない。多くの人が抱く疑問に答えるには,今後の詳細な調査が必要である」と述べ,強い注意を促している。

試験背景/目的 心房細動(AF)患者の脳卒中予防薬として,第Xa因子を直接的・選択的に阻害する新規薬剤リバロキサバンが開発された。本薬剤の半減期は5~13時間であり,その1/3は腎にて直接排泄され,残りの2/3はCYP450による代謝を受ける。また,凝固モニタリングを必要としない1日1回投与の薬剤であり,過去の臨床試験では,深部静脈塞栓症や肺塞栓症における有用性が認められている。本研究は,AF患者を対象に,リバロキサバンの脳卒中などの全身性塞栓症予防効果について現行薬ワルファリンと比較した,二重盲検ランダム化比較試験である。

一次エンドポイントは,脳卒中または非中枢神経系全身性塞栓症。
非劣性についてはon-treatment解析。
優越性についてはon-treatment解析実施後にintention-to-treat解析。

11月15日のLate–Breaking Clinical Trialsにおいて,Kenneth W. Mahaffey氏(Duke Univ, Durham, NC)がこの試験の結果を発表した。

試験プロトコール ROCKET AF試験には,45ヵ国,1,178施設が参加。対象は,リスク因子(うっ血性心不全[CHF],高血圧,75歳以上,糖尿病)を三つ以上有するAF患者,あるいは脳卒中・一過性脳虚血発作(TIA)・全身性塞栓症の既往例でリスク因子を二つ以上有するAF患者。

リバロキサバン群(7,131例。20mg/日を投与。ただしクレアチニンクリアランスが30~49mL/分の患者には15mg/日を投与)とワルファリン群(7,133例)にランダム割付けし,二重盲検下(ダブルダミー)にて検討。目標INRは2.5。

試験結果 患者背景は,平均年齢はリバロキサバン群73歳,ワルファリン群73歳,女性40%,40%,白人/黒人/アジア人 83/1/13%,83/1/13%,クレアチニンクリアランス30~50mL/分 21%,21%,平均CHADS2スコア3.48,3.46,ビタミンK拮抗薬の使用歴62%,63%,CHF 63%,62%,高血圧90%,91%,糖尿病40%,39%,脳卒中/TIA/塞栓症の既往55%,55%,心筋梗塞の既往17%,18%。

非劣性に関する解析の結果,一次エンドポイント発生率はリバロキサバン群1.71/100人・年,ワルファリン群2.16/100人・年であり(ハザード比[HR]0.79,95%信頼区間[CI]0.66~0.96),リバロキサバンのワルファリンに対する非劣性が認められた(非劣性P<0.001)。

優越性については,on-treatment解析での一次エンドポイント発生率はリバロキサバン群1.70/100人・年,ワルファリン群2.15/100人・年であり(HR 0.79,95%CI 0.65~0.95),リバロキサバンの優位性が認められた(優越性P=0.015)。しかし,intention-to-treat 解析での一次エンドポイント発生率はそれぞれ2.12/100人・年,2.42/100人・年であり(HR 0.88,95%CI 0.74~1.03),有意な群間差は認められなかった(優越性P=0.117)。

ワルファリン群におけるINR至適範囲内時間(Time in Therapeutic Range: TTR)は平均57.8%。ワルファリン群の一次エンドポイント発生率は,TTRが低いほど高いことが示された。

安全性に関する解析の結果,大出血または治療に関連する非大出血発生率はリバロキサバン群14.91/100人・年,ワルファリン群14.52/100人・年であり(HR 1.03,95%CI 0.96~1.11),有意な群間差は認められなかった(P=0.442)。

有害事象発生率はリバロキサバン群82.4%,ワルファリン群82.2%,重篤な有害事象発生率は37.3%,38.2%,試験薬投与中止に至った有害事象発生率15.7%,15.2%。ALT上昇がULNの3倍超(>3×ULN)となった患者はそれぞれ2.9%,2.9%,5倍超(>5×ULN)は1.0%,1.0%,3倍超(>3×ULN)かつ総ビリルビンがULNの2倍超(>2×ULN)となった患者は0.4%,0.5%。

発表者のMahaffey氏は,「中~高リスクのAF患者において,リバロキサバンはワルファリンに替わる治療薬として有用であることが証明された」と述べた。

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