SHIFT | Systolic Heart failure treatment with the If inhibitor ivabradine Trial |
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試験背景/目的 慢性心不全患者において,安静時心拍数の上昇は有害アウトカムの危険因子であるが,β遮断薬投与患者の大部分で心拍数を低下できておらず,新規の治療戦略が求められている。本研究では,ガイドラインに基づく標準治療が行われている慢性心不全および左室機能不全患者において,洞房結節のIf電流を特異的に阻害して心拍数を減少させるivabradineの上乗せ効果を検証する。
複合一次エンドポイントは心血管死+心不全悪化による入院。
試験プロトコール SHIFT試験(二重盲検ランダム化比較試験)には37ヵ国677施設が参加。対象は,左室収縮機能不全の中等度~重度心不全,18歳以上,洞調律,安静時心拍数≧70bpm,4週間以上安定している症候性慢性心不全,過去12ヵ月以内に心不全悪化のため入院,左室駆出率(LVEF)≦35%の6,558例(解析対象は6,505例)。
ivabradine群(3,268例。5mg,1日2回より開始し,14日かけて7.5mg,1日2回へ漸増投与)とプラセボ群(3,290例)にランダム割付け。
ただし,安静時心拍数50~60bpmの場合は5mg,1日2回投与を維持,<50bpmまたは徐脈の徴候/症状がみられる場合は2.5mg,1日2回に減量。
追跡期間中央値は22.9ヵ月(2010年3月31日まで)。
試験結果 患者背景は,平均年齢60.4歳,男性76%,白人89%,平均心拍数79.9bpm,平均LVEF29.0%。NYHA分類II 49%,III 50%,IV 2%。RAAS拮抗薬の使用歴は91%,β遮断薬使用中は89%であった。
一次エンドポイントの発生は,ivabradine群で793例(24%),プラセボ群で937例(29%)であり,有意な群間差が認められた(ハザード比[HR]0.82,95%CI 0.75~0.90,P<0.0001)。
ivabradine群の効果はおもに心不全悪化による入院(16% vs 21%,HR 0.74,95%CI 0.66~0.83,P<0.0001)の減少によるものだった。心血管死,全死亡,その他の死亡については有意な差は認められず,全入院はivabradine群で有意に減少した(HR 0.89,95%CI 0.82~0.96,P=0.003)。
[サブグループ解析]
サブグループ(年齢,性別,β遮断薬,心不全の原因,NYHA分類,糖尿病,高血圧,心拍数)における一次エンドポイントの発生は,心拍数のみで相互作用が認められた(<77bpm:HR 0.93,95%CI 0.80~1.08,≧77bpm:HR 0.75,95%CI 0.67~0.85,P for interaction=0.029)。
重篤な有害事象の発生はivabradine群(45%)でプラセボ群(48%)に比べて有意に少なかった(P=0.025)。症候性徐脈は5%,1%(P<0.0001),視覚的副作用(光視)は3%,1%(P<0.0001)とivabradine群のほうが多かった。