J-LANCELOT | Japanese-Lesson from Antagonizing the Cellular Effect of Thrombin |
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試験背景/目的 ACS患者やCAD患者において血小板活性化を抑制するために,ガイドラインではアスピリンやADP受容体拮抗薬の服用が推奨されている。atopaxarは血小板の膜上に存在するトロンビン受容体であるPAR1受容体を拮抗阻害し,血小板活性化を抑制する新規作用機序の薬剤である。
atopaxarの第I相試験では,健康なボランティアにおいて血小板凝集抑制効果が認められた。この第II相試験は,標準療法への追加投与の安全性と忍容性を検証するために実施された。
一次エンドポイントは出血事象の発生(TIMI基準またはCURE基準)。
二次エンドポイントは主要心血管イベント(心血管死,心筋梗塞,脳卒中,虚血)。
試験プロトコール 対象はACS(不安定狭心症,非ST上昇型心筋梗塞)患者241例,高リスクCAD患者263例。
それぞれをatopaxarの用量別3群(50mg/日群,100mg/日群,200mg/日群)とプラセボ群にランダム割付けし,標準療法に上乗せしてACS患者では12週,高リスクCAD患者では24週の連続投与を行った。またACS患者では実薬3群にはローディングドーズ400mgの投与を1日行った。両患者とも,最終投与後4週間追跡した。
試験結果 CURE分類による出血はいずれの群でも低く同等であったが,TIMI基準による出血はatopaxar 200mg群で増加する傾向がみられた。ただしTIMI基準による大出血はいずれの群でも認められなかった。
主要心血管イベントの発生率は,ACS患者ではatopaxar群全体とプラセボ群で同等であったが(5.0% vs 6.6%,P=0.73),高リスクCAD患者ではatopaxar群全体のほうがプラセボ群よりも発生率が低い傾向が示された(1.0% vs 4.5%,P=0.066)。
また,トロンビン受容体活性化ペプチドによる血小板凝集検査を実施したところ,凝集抑制度はACS患者ではatopaxar 50mg/日群で20~50%,100mg/日群,200mg/日群で90%超であった。400mgローディングドーズの3~6時間後には平均80%超の阻害率が確認された。高リスクCAD患者の血小板凝集の抑制度は50~60%だった。
また,atopaxarによる用量依存性の肝機能障害,QTcF延長が認められた。
本試験の結果,atopaxarが出血イベントの増加を伴わずに,主要心血管イベントを抑制する可能性が示唆された。現在実施中の第III相試験の結果がまたれる。