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[学会情報]米国心臓病学会(ACC)学術集会2011
CABGかPCIか,それは病変の位置,数,広がり,複雑性で決まる
––CABGについてGersh氏に聞く –後編
前編を読む: CABGは虚血性心不全にも有効,ただし代償も伴う

ニューオーリンズで開催されたACC 2011のLBCTにて,4月4日,CABG関連トライアルであるSTICH試験とPRECOMBAT試験が発表となった。韓国で行われたPRECOMBAT試験では,非保護左主幹部病変に対するPCIは,CABGに対し非劣性であることが示された。専門家はこの結果をどのように捉えているのか。メイヨークリニック医学校のBernard Gersh氏に感想を聞いた。

一概にCABGがよいわけでなく,一概にPCIがよいわけでもない

左主幹部病変は,従来はCABGの適応とされることが多く,いわば心臓外科医の独擅場でした。しかし現在はPCIを行うことも可能になってきています。PRECOMBAT試験は,左主幹部病変に対するPCIとCABGを比較した小規模ランダム化比較試験です。

左主幹部病変のうち,入口部や遠位部の病変をもつ患者の数が示されていたかどうかも重要です。入口部病変は,遠位部や分岐部に比べ,もっともPCIに適しているからです。臨床の観点からは,個別化治療が必要です。私がPCIかCABGかを決定する際に考慮するのは,病変血管の数,病変の広がり,複雑性,左室機能,合併症,そして病変血管の位置で,これはPRECOMBAT試験の結果をみても変わりません。頻度は高くありませんが,かなり限局した左主幹部病変であればPCIのよい適応となります。その他の理由でCABGが難しい患者であればなおさらです。一方,3枝病変の1つが左主幹部病変でSYNTAXスコアが高い患者もいます。もし患者が手術には向かないのであれば,PCIを考慮します。

左主幹部病変でもさらに細分化した解析が重要

PRECOMBAT試験は小規模なトライアルですが,現在,3,400人と大規模な集団で同様の検討を行うEXCEL試験が進行中です。左主幹部病変のなかでもどのような例がPCIに適しているかや,分岐部病変の結果などについても明らかにされるでしょう。

今後,新しい世代の薬剤溶出ステントの結果が出てきても,治療効果に革新的な違いがもたらされるとは思いません。PRECOMBAT試験でも,差がついたアウトカムは死亡や心筋梗塞ではなく,再血行再建術だったからです。

Profile: Dr. Bernard Gersh, MB, ChB, D.Phil, FRCP, FACC
メイヨークリニック医学校教授。専門は冠動脈疾患,臨床電気生理学,成人先天性心疾患,心筋症など。Circulation,Journal of American College of Cardiology,European Heart Journalなど25の専門誌の編集委員で,これまでの自身の発表論文は650以上にのぼる。AHA臨床心臓病学部門の元議長,ACCの元評議員であり,現在はWHOの心血管ワーキンググループ議長も務める。

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