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[学会情報]米国心臓協会(AHA)学術集会2011
(2011年11月12日~16日 in オーランド)
編集部が選ぶ注目トライアル
<Late-Breaking Clinical Trials 1>
TRA・CER The Thrombin Receptor Antagonist for Clinical Event Reduction in Acute Coronary Syndrome (TRA・CER) Trial
新規抗血小板薬vorapaxar追加投与は非ST上昇型ACS患者の心血管イベントを抑制せず
エキスパートインタビューを読む: ACS二次予防戦略の今後は抗凝固薬か? 新規抗血小板薬か?

非ST上昇型急性冠症候群(ACS)患者を対象としたTRACER試験(第III相試験)にて,新規プロテアーゼ活性化(PAR-1)受容体拮抗薬vorapaxarを標準療法へ上乗せすることの有効性と安全性を検討した結果,vorapaxarはプラセボに比べ複合心血管イベントの発生を抑制せず,出血リスクを増加させた。

対象は,非ST上昇型ACS患者で①来院24時間以内に症状がある,②心筋トロポニン・CK-MBなどのバイオマーカー上昇もしくはECGに変化がある,③その他ハイリスクの特徴がある症例。患者はvorapaxar(loading dose 40mg,維持用量2.5mg/日)群6473例,プラセボ群6471例にランダムに割り付けられ,2年間追跡された。2年間における一次エンドポイント(心血管死+心筋梗塞+脳卒中+虚血による入院+緊急の血行再建術)発生率は,両群間に有意差はみられなかった(1031例 vs 1102例,ハザード比[HR]0.92,95%信頼区間[CI]0.85-1.01, P=0.072)。一方,二次エンドポイントの心血管死+心筋梗塞+脳卒中についてはvorapaxar群で有意に減少した(910例 vs 822例,HR 0.89, P=0.018)。

安全性については,GUSTO基準による中等度および重度の出血,TIMI基準による重度の出血はともにvorapaxar群で有意に増加した(GUSTO基準:391例 vs 290例,P<0.001,TIMI基準:1065例 vs 755例,P<0.001)。チエノピリジン系薬剤非投与例のサブグループでは有意な群間差はなく,同薬投与の有無は出血リスクに有意な影響を与えていた(相互作用のP=0.044)。しかし致死的な出血は両群間に有意差はなかった(15例 vs 8例,P=0.15)。

発表者であるMahaffey氏は,「今後,PAR-1受容体拮抗薬については,別の治療戦略や他の冠動脈疾患患者を対象としてさらなる研究を進める必要がある」と述べた。同試験は安全性モニタリング委員会の勧告より予定より早く中止されている。


発表スライド等はこちらでご覧いただけます。
http://my.americanheart.org/professional/Sessions/ScientificSessions/ScienceNews/SS11-Late-Breaking-Clinical-Trials_UCM_432888_Article.jsp

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