ホーム   >  学会レポート   >   2011年   >   AHA2011   > Antman氏に聞く––TRACER「ACS二次予防戦略の今後は抗凝固薬か? 新規抗血小板薬か?」
[学会情報]米国心臓協会(AHA)学術集会2011
(2011年11月12日~16日 in オーランド)
EXPERT INTERVIEW
ACS二次予防戦略の今後は抗凝固薬か? 新規抗血小板薬か?
Antman氏に聞く––TRACER
今回の結果による,ACS二次予防の治療戦略への影響は

新規抗血栓薬の検討は,ACS患者のACS二次予防においても本格化しはじめました。今回発表されたTRACERは抗血小板薬vorapaxar,ATLAS-ACS 2 TIMI 51は抗凝固薬リバロキサバンについて,従来の2剤抗血小板療法へ上乗せした際の有用性と安全性を検討したものであり,いずれも大きな関心を寄せていました。結果は明暗分かれた形にはなりましたが,これで決着と考えるのではなく,引き続き注目していくべき問題であると思います。

TRACER試験にどのような印象をもたれましたか

TRACER試験で検討された新規のプロテアーゼ活性化受容体(PAR-1)拮抗薬vorapaxarは,血小板表面上にあるPAR-1に拮抗し,トロンビンによる血小板活性化を阻害する薬剤です。本試験ではこのvorapaxarを標準療法に追加投与した際の有用性をプラセボと比較していますが,思わしい結果は示されませんでした。一次エンドポイント(心血管死+心筋梗塞+脳卒中+虚血による入院+緊急の血行再建術)発生率には,有意な群間差がなく,出血イベントはvorapaxar群で増加していました。二次エンドポイント(心血管死+心筋梗塞+脳卒中)発生率は,vorapaxar群で有意に低いことが示されましたが,一次エンドポイントの結果がネガティブであっただけに,二次エンドポイントの結果をことさらに強調すべきではありません。

vorapaxarをどう評価されますか

新規抗凝固薬である第Xa因子阻害薬rivaroxabanの標準療法の上乗せ効果を検証したATLAS-ACS 2 TIMI 51試験では,その有用性と安全性が示されました。今後はACS患者における血栓症予防にも,抗凝固薬への期待が高まるものと思います。一方,vorapaxarについては,TIMIスタディグループによる第III相試験TRA-2P(デザイン論文)が実施されており,2012年春に結果が発表される予定です。vorapaxarの評価について議論するにはTRA-2P試験の結果をまつ必要があると考えています。

Profile: Dr. Elliott Antman
Professor of Medicine, Harvard Medical School
Cardiovascular Division, Brigham and Women's Hospital

▲このページの上へもどる