RE-LY試験,ROCKET-AF試験,そして今回のARISTOTLE試験では,心房細動患者における新規抗凝固薬の血栓塞栓症予防効果と安全性が,ワルファリン療法と比較されました。それぞれの試験で検討された新規抗凝固薬はいずれも,血栓塞栓症予防効果はワルファリンに比べ少なくとも非劣性であり,安全性にも問題がないことが示唆されています。とくに今回ARISTOTLE試験でapixabanはワルファリンよりも脳出血リスクが著しく低いことが示されたことは,注目すべき点だと捉えています。ただ,新規抗凝固薬(直接トロンビン阻害薬 ダビガトラン,第Xa因子阻害薬apixaban・rivaroxaban)を直接比較した臨床試験は実施されていません。臨床現場における薬剤選択は,個々の医師の判断に委ねられることになります。
それについてはいくつかの問題があります。まず,ワルファリンとは異なり,新規抗凝固薬が定期的なモニタリングを要さないということは,患者が服薬をしているか否かを知り得ないことを意味します。また,1日2回投与であることは,服薬コンプライアンスを維持するにはデメリットといえるでしょう。
薬価の問題もあります。新規抗凝固薬の薬価の多くはワルファリンの8倍程度になると聞いていますので,一生飲み続けなければならない患者にとって大きな違いでしょう。ただし,これらの新規抗凝固薬がイベントを抑制することでトータルの医療費が抑えられる可能性もあると思います。
その通りです。たとえば歯科医は1日2回の歯磨きを指導しますが,多くの人は1回しか磨かない。それが人間というものです。つまり,1日2回服用の薬剤は1回しか服用されない傾向があるということを意味します。このことを念頭に置くべきであると考えます。