CREDO-Kyoto PCI/CABG Registryは登録患者数も多く,非常によくデザインされた登録研究です。その結果は重要な意味をもちますし,今後の治療に与える影響について見守っていくべきだと考えています。この研究では三枝病変患者でのCABGの優位性が示されましたが,それには心筋梗塞の発生率の違いが強く影響していました。30日後の心筋梗塞発生例数は,CABG群で19例,PCI群で25例,3年後はそれぞれ26例,76例と大きな差がついていることは認識しておく必要があるでしょう。
近年は3枝病変患者に対してPCIが実施される症例が増えつつありますが,それでも米国ではPCIよりもCABGが選択されるケースが圧倒的に多いです。血行再建術と薬物療法を比較したBARI-2D試験参加者のうち,3枝病変を有していた症例をみると,血行再建術群では52.4%にCABG,20.3%にPCIが実施されていました。米国ではおそらく,3枝病変患者の4人に3人はCABGが行われているのが実情です。
SYNTAXスコアによる層別解析では,高スコア群でCABGの優位性が示されたSYNTAX試験とは異なり,低スコア群のみでCABGがPCIよりも有用であることが示されました。これは意外な結果でしたが,CREDO-Kyoto PCI/CABG Registryは登録研究であるのに対し,SYNTAX試験は,PCIとCABGのいずれに対しても適応のある症例が対象となった介入試験です。ですから単純に比較することはできません。
日本においてCABGとPCIのどちらが優れているかを評価するには,やはりランダム化比較試験による検討が必要だと思います。