EARTH Study | Comparison of the Efficacy and Safety of Irbesartan and Olmesartan in Patients with Hypertension study |
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森井 誠士氏(福岡大学医学部) |
【10 月 21 日・宇都宮】
背景と目的 わが国では 6種のアンジオテンシン II受容体拮抗薬(ARB)が保険適応とされている。これらには,ARBに共通するクラスエフェクトのほか,それぞれの化学構造のわずかな違いによって生じる薬剤特異的な効果(ドラッグエフェクト)が存在すると考えられている。
福岡大学医学部心臓血管内科学の森井誠士氏らの研究グループはこれまで,イルベサルタンとオルメサルタンはそれぞれ,AT1受容体に対する特異的な結合様式を有することを報告してきた。同氏らは今回,本態性高血圧患者におけるイルベサルタンとオルメサルタンの特性の違いを臨床的に比較し,その結果を 2011年 10月 21日の第 34回日本高血圧学会総会ポスターセッションで発表した。
一次エンドポイントは,試験開始時と終了時の血圧変化であり,そのほか,炎症性物質などの変化量も検討した。
試験プロトコール 本態性高血圧患者 61例を,イルベサルタン群とオルメサルタン群にランダム化し,12週間追跡。ARB投与中の患者は,割り付けられた薬剤への切り替えを行った。
結果 61例中 5例が割り付け後に脱落,56例を追跡した。ARB未投与は 17例,投与中は 39例であり,イルベサルタン群(28例)とオルメサルタン群(28例)にランダム化した。患者背景は,イルベサルタン群 70±10歳,オルメサルタン群 71±9歳,男性 64%,68%,BMI 23±5kg/m2,24±3 kg/m2,喫煙率 43%,39%,糖尿病既往 29%,39%,脂質異常症既往 86%,86%,高尿酸血症18%,7%,慢性腎臓病(CKD)32%,46%。
両群の試験開始時血圧はそれぞれ 133±19/72±11 mmHg,129±15/69±12 mmHgであり,試験開始前の投薬状況は,それぞれβ遮断薬 21%,32%,Ca拮抗薬 61%,39%,利尿薬 18%,25%,スタチン 86%,82%であった。試験期間中の試験薬投与量は,イルベサルタン群で 96±54 mg/日,オルメサルタン群 19±10 mg/日)であった。
両群ともに良好な降圧が得られ,全例の平均は,試験開始時 131/71 mmHgから 4週間後 123/67 mmHgへと著明に低下した。とくにイルベサルタン群のうち試験開始前にARBが投与されていなかったグループで,顕著な降圧がみられた。また,各群の血圧値のばらつきを等分散性検定で解析した結果,試験開始時には群間差が認められなかったが,12週間後では,イルベサルタン群はオルメサルタン群よりも分散が有意に小さかった(収縮期血圧:p=0.030,拡張期血圧: p=0.036)。
炎症性マーカーである単球遊走活性化因子(MCP)-1とペントラキシン(PTX)-3は両群ともに低下する傾向がみられ,全症例での検定では有意差が得られた( p<0.05)。イルベサルタン群のなかでもイルベサルタン 100 −200mg/日が投与されていた症例では,PTX-3の有意な低下がみられた。12週間後における肝機能や血糖値,電解質の検査値に有意な群間差は認められなかった。
イルベサルタンとオルメサルタンの降圧効果は同程度であったが,試験終了時,患者間の血圧値のばらつきがイルベサルタン群のほうが小さかった。これに対し発表者の森井氏は,「イルベサルタンは多くの患者に一定の降圧をもたらす」と考察している。さらに,100~200 mg/日のイルベサルタンが投与された症例でPTX-3の有意な低下が認められたことから,同氏は,イルベサルタンに抗炎症作用というドラッグエフェクトが存在する可能性があると述べている。