TRAD10 | Trial for Administration Method of Amlodipine 10mg |
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石光 俊彦氏 (獨協医科大学循環器内科) |
【10 月 21 日・宇都宮】
背景と目的 高血圧患者では,診察室血圧のみならず,早朝の血圧上昇や夜間血圧が心血管イベントや臓器障害のリスクに影響することが知られており,『高血圧治療ガイドライン 2009』でも 24時間にわたる厳格な血圧コントロールが推奨されている。そのためには,長時間作用型の降圧薬を用いることが重要であり,なかでも半減期が 36時間である Ca拮抗薬アムロジピンは,臨床において広く用いられている。
また,アムロジピンの血中濃度のピーク( Tmax)は 8時間であることから,同薬の就寝前の服用は,早朝の血圧上昇の抑制に有用であると考えられている。獨協医科大学の石光俊彦氏らは,高用量アムロジピンを朝あるいは夜の 1日 1回,もしくは 1日 2回(朝・夜)服用した場合の降圧持続効果を検討し,「高血圧患者における高用量の長時間作用型 Ca拮抗薬の服用時間に関する検討」と題して,第 34回日本高血圧学会総会ポスターセッションにてその結果を発表した。
評価項目は,各治療期終了時における,診察室血圧,心拍数,血漿脳性 Na利尿ペプチド(BNP),尿中アルブミン排泄(UAE)。このほか,各治療期最終週の家庭血圧(朝と夜)の平均値も検討された。
試験プロトコール 対象者はアムロジピン 10mg/日未満あるいはアムロジピン以外の Ca拮抗薬を服用中で,降圧目標未達成の 30歳以上の本態性高血圧患者 19例。降圧目標は下記のとおり。
・リスク第1層,第 2層の若・中年者:130/85mmHg未満
・高齢者(65歳以上):140/90mmHg未満
・糖尿病,慢性腎臓病(CKD),心筋梗塞既往例:130/80mmHg
アムロジピン以外の Ca拮抗薬の投与は中止し,アムロジピン 1日 1回朝 10mg群(以下,朝 1回群),同1日 1回夜 10mg群(以下,夜 1回群),同 1日 2回朝 5mg夜 5mg群(以下,朝・夜 2回群)にランダム化。初期割り付け投与法にて 8~12週間投与した後,それぞれ 2回クロスオーバーし 4~8週ずつ投与,全例 3種類の投与法を受けた。各投与期間最終 1週間に家庭血圧を測定,クロスオーバー前に採血,検尿を行った。なお,試験期間中は,その他の投与薬の用法・用量は変更しないこととした。
結果 患者背景は,64±13歳,男性 10例,女性 9例,BMI 25.7±3.3,血圧142±13/84±9mmHg,脈拍 71±13拍 /分,高血圧罹患歴 19±10年,喫煙 3例,飲酒 7例,糖尿病既往 26.3%,脂質異常症既往52.6%,心血管疾患既往31.6%。
試験開始前のおもな投薬状況は,Ca拮抗薬 19例,利尿薬 7例,α遮断薬 1例,β遮断薬 4例,ACE阻害薬 3例,アンジオテンシン II受容体拮抗薬(ARB)13例,脂質異常症治療薬 7例,糖尿病治療薬 4例,高尿酸血症治療薬 3例,抗血小板薬 6例,硝酸薬 2例,抗不整脈薬 1例。
診察室血圧は,試験開始前(142±13/84±9mmHg)にくらべ,朝 1回群(128±13/75±8mmHg),夜 1回群(131±12/76±8mmHg),朝・夜 2回群(130±10/77±10mmHg)のいずれも有意に低下したが(朝・夜 2回群の収縮期血圧のみ p< 0.05,それ以外はいずれも p<0.01,検定 ANOVA, Tukey),有意な群間差は認められなかった。各治療期における家庭血圧についても,朝・夜の測定値ともに朝 1回群,夜 1回群,朝・夜 2回群の 3群で有意な群間差は認められなかった。心拍数については試験開始前と各治療期終了時の間に有意差なし。各治療期の終了時における血漿 BNPや尿中微量アルブミン排泄量についても有意な群間差は認められなかった。安全性については,試験期間中いずれの投与方法においても,浮腫・動悸などの副作用の発現は認められなかった。
発表者の石光氏は,「アムロジピンへの切り替えもしくは増量は診察室血圧をさらに低下させ,その降圧効果は,投与のタイミングに関わらず 24時間にわたって維持された」とまとめた。同氏はさらに,「高用量アムロジピンは反射性頻脈を誘発させず,心筋および糸球体への圧負荷に対しては,高用量アムロジピンの投与のタイミングに影響されないことが示唆された」と述べている。