ホーム   >  学会レポート   >   2011年   >   JSH2011   > イルベサルタンへの追加投与はアムロジピン,インダパミドで降圧効果は同等 IrbesartanをベースとしたCombination therapyの検討— AmlodipineかIndapamideか?—
[学会情報]日本高血圧学会(JSH)2011
編集部が選ぶ注目トライアル
IrbesartanをベースとしたCombination therapyの検討
— AmlodipineかIndapamideか?—
イルベサルタンへの追加投与はアムロジピン,インダパミドで降圧効果は同等

長野俊彦氏
長野 俊彦氏(岩砂病院)

【10月20日・宇都宮】

背景と目的 厳しい降圧目標が設定されている今日の高血圧治療においては,降圧薬1 剤での降圧目標到達は困難になってきている。日本の臨床現場では,第一選択薬をレニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬もしくはCa 拮抗薬で治療を開始し,第二選択薬として,いずれか一方,あるいは利尿薬を追加投与することが多い。

しかし,いずれの併用がより有効であるかを検討した研究は少ない。岩砂病院の長野俊彦氏らは,アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)イルベサルタンを第一選択薬とし,Ca拮抗薬アムロジピンまたは利尿薬インダパミドのいずれかを追加投与した場合の,降圧効果と尿中アルブミン/クレアチニン比に及ぼす影響を比較検討し,2011年10月20日に行われた第34回日本高血圧学会総会ポスターセッションにてその結果を発表した。

おもな評価項目は,降圧効果,微量アルブミン/クレアチニン比。

試験プロトコール 対象は,イルベサルタン以外のアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)のみで治療中の症例,または新規症例の合計40例。全例にイルベサルタン100mg/日を8週間投与し(ステージ1),降圧目標達成例ではイルベサルタン100mg/日単剤を継続(単剤群,15例),降圧目標非達成例ではアムロジピン2.5mg/日を追加・適宜増量(アムロジピン追加群,12例),インダパミド0.5mg/日を追加・適宜増量(インダパミド追加群,13例)にランダム化し,12週間追跡した(ステージ2)。

降圧目標は140/90mmHg未満,糖尿病合併例は130/80mmHg未満とした。

結果 おもな背景は,平均年齢64.0±9.8 歳,BMI23.7±3.0kg/m²,血圧158.5±15.2/89.0±10.8 mmHg,尿中アルブミン51.5±77.0mg/dL,推定糸球体ろ過量(eGFR)79.2±16.3 mL/分/1.72m²であった。単剤治療群と,追加群の患者背景では,追加群のBMIが有意に高かったほかは,有意な差はみられなかった。

ステージ2終了時の収縮期血圧は,単剤群,追加群(アムロジピン追加群+インダパミド追加群)ともに有意に低下し(単剤群155.7±14.4mmHg→130.3±10.6 mmHg,p<0.05;追加群160.1±15.7mmHg→131.1±10.2mmHg,p<0.05),群間差は認められなかった。アムロジピン追加群とインダパミド追加群の降圧度については,収縮期血圧においてアムロジピン追加群の方で降圧度が大きかったが有意差は認められなかった(収縮期血圧の降圧度:アムロジビン追加群−19.7±14.5mmHg,インダパミド追加群−14.5±14.3mmHg,ns)。

尿中アルブミン/ クレアチニン比については,インダパミド追加群は単剤群およびアムロジピン追加群に比べ低下している傾向があった(単剤群36.4±64.3mg/g·Cr→49.9±156.1mg/g·Cr,ns;アムロジピン追加群40.6±41.9mg/g·Cr→35.5±48.0mg/g·Cr,ns;インダパミド追加群79.1±107.8mg/g·Cr→34.2±34.8mg/g·Cr,p=0.09)。

さらに長野氏らは,日本人の平均食塩摂取量である10.9g/日(平成20年国民健康栄養調査)で2群にわけ,10.9g/日以上の塩分を摂取していた18例と,10.9g/日未満の22例で降圧度を比較したところ,10.9g/日未満に比べ,10.9g/日以上群では血圧低下度が少ない傾向が示された(10.9g/日未満群−22.7±16.3mmHg vs. 10.9g/日以上群−11.0±17.7mmHg,p=0.056)。このことから塩分摂取量の多い高血圧患者では,降圧薬への反応が鈍い可能性があるとした。

本研究から,イルベサルタンで降圧不十分な高血圧患者において,アムロジピンあるいはインダパミドのいずれを追加しても,良好な降圧が得られることが示された。発表者の長野氏は,「収縮期血圧の降圧効果はアムロジピン追加のほうが大きい傾向があり,尿中アルブミン/クレアチニン比に対する効果はインダパミド追加のほうが優れている可能性がある」と述べるとともに,「イルベサルタンの降圧効果をさらに発揮させるには,厳格な減塩指導が必要である」ことを強調した。

▲このページの上へもどる