WOEST | What is the Optimal antiplatElet & anticoagulant therapy in patients with oral anticoagulation and coronary StenTing. |
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Dewilde Willem氏 |
試験背景/目的 心房細動や機械弁置換術施行例の3割以上に,虚血性心疾患が発症するといわれている。心房細動による血栓性合併症予防には抗凝固療法が,PCI施行によるステント血栓症予防にはクロピドグレルとアスピリンなどによる抗血小板療法が必要と考えられるが,これら3剤の併用を行うと出血リスクが高まることが懸念されている。
WOEST試験では,抗凝固薬服用中の患者でPCIが予定されている症例において,経口抗凝固薬とクロピドグレルの2剤併用群と,さらにアスピリンを加えた3剤併用群の有用性と安全性を検討。8月28日,その結果がHot Line 3においてprincipal investigatorのDewilde Willem氏(Twee Steden Hospital, オランダ)より発表された。
試験プロトコール 対象は1年以上経口抗凝固薬を継続服用している患者で,冠動脈ステント(BMS,DESのいずれも可)を1つ以上留置する予定のある18歳以上の患者。2剤併用群(経口抗凝固薬+クロピドグレル75mg/日)または3剤併用群(経口抗凝固薬+クロピドグレル75mg/日+アスピリン80mg/日)にランダムに割付けられた。割付はオープンラベルで,イベント発生の判定はブラインド化された委員が実施した。
一次エンドポイントは1年後の出血イベント。二次エンドポイントは死亡,心筋梗塞,標的血管血行再建術,脳卒中,ステント血栓症の複合。
試験結果 解析対象となったのはオランダとベルギーの15施設から登録された563例。平均年齢は約70歳で,約8割が男性。平均BMIは28kg/m²。抗凝固薬服用理由は約70%が心房細動,約10%が機械弁置換であった。
PCI施行病変は,約40%が左冠動脈下行枝,約50%が回旋枝または右冠動脈。全体の約5%でCABGが実施されていた。DESとBMSの比率は6.5対3。
一次エンドポイントである全出血イベント発生率(TIMI基準)は,PCI施行直後から群間差が開き,1年後は2剤併用群で19.5%,3剤併用群で44.9%と2倍以上の差が認められた(ハザード比0.36,95%信頼区間0.26~0.50,P<0.001)。
出血部位の内訳をみると,頭蓋内(3例 vs 3例)は同等だったが,カテーテル挿入部位(16例 vs 20例),胃腸(8例 vs 25例),皮膚(7例 vs 30例),その他(20例 vs 48例)は2剤併用群のほうが少なかった。
二次エンドポイントである1年後までの心血管イベント発生率も,2剤併用群で11.3%,3剤併用群で17.7%と,2剤併用群のほうが有意に少なかった(ハザード比0.60,95%信頼区間0.38~0.94,P=0.025)。構成項目ごとにみると,全死亡率が2剤併用群で有意に低く(2.6% vs 6.4%,P=0.02),心筋梗塞や脳卒中,ステント血栓症の発生率も,有意差はみられなかったものの,2剤併用群のほうが低い傾向であった。
Dewilde氏はこの試験がオープンラベルの試験であることや,二次エンドポイントとした心血管イベント発生率の優越性を示すには検出力が足りないことなどこの試験の限界をふまえつつ「本試験は,PCI施行後の抗凝固薬と抗血栓薬の選択について検討した,初めてのランダム化試験である。2剤併用は3剤併用よりも出血リスクが低かったことは予想どおりの結果だが,2剤併用でも血栓性イベントが増加することはなく,さらに全死亡率は2剤併用群のほうが低かった。われわれは,抗凝固療法を要する高リスク症例にPCIを施行する場合,アスピリンは用いず,抗凝固療法とクロピドグレルの2剤を用いることを提案したい」と述べた。