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[学会情報]欧州心臓病学会(ESC)学術集会2013
(2013年8月31日~9月4日 in アムステルダム)
<Hot Line III>
EXAMINE Examination of Cardiovascular Outcomes with Alogliptin versus Standard of Care in Patients with Type 2 Diabetes Mellitus and Acute Coronary Syndrome
急性冠症候群を発症した2型糖尿病患者において,プラセボと比較してDPP-4阻害薬アログリプチンは主要心血管イベントを増加させない
William B. White氏
William B. White氏
【9月2日・アムステルダム】

試験背景/目的 2型糖尿病患者の心血管疾患(CVD)のリスクは健康成人の約2~4倍といわれているが,近年の研究からは,厳格な血糖コントロールが大血管イベントの発生を抑制するという結果は得られていない。また,いくつかの糖尿病治療薬は心血管イベントを増加させる可能性が指摘されていることから,米国食品医薬品局(FDA)は2008年に新規糖尿病治療薬に対して,心血管系への安全性に関する要求をまとめたガイダンスを発表した。
選択的DPP-4阻害薬アログリプチンは,第II/第III相試験において心血管イベントの増加は認められなかったが,CVDのリスクが低い集団を対象としたことが影響していた可能性は否定できない。そこで,急性冠症候群(ACS)を最近発症した2型糖尿病患者において,標準治療にアログリプチンまたはプラセボを追加した場合の主要有害心血管イベント(MACE)発生率を検討した,国際多施設共同ランダム化比較試験のEXAMINEが実施された。9月2日に開催されたHot Line Session IIIで,William B. White氏(University of Connecticut School of Medicine,米国)より結果が発表され,試験結果は同日,New England Journal of Medicine誌のonline版に掲載された。

試験プロトコール 対象はランダム化の15~90日前にACS(心筋梗塞または入院を要する不安定狭心症)を発症した2型糖尿病患者で,かつ2型糖尿病に対する標準治療およびCVD二次予防の標準治療を受けている5380例。対象はアログリプチン群(標準治療+アログリプチン25mg,12.5mg,6.5mg/日)2701例,プラセボ群(標準治療+プラセボ)2679例に割り付けられた。追跡期間は18ヵ月(中央値)。
腎機能により決定

試験デザインはランダム化,二重盲検,プラセボ対照。一次エンドポイントは心血管死+非致死性心筋梗塞+非致死性脳卒中の複合。アログリプチンのプラセボに対する非劣性を証明することを目的とし,ハザード比(HR)の非劣性マージンは1.3と設定。非劣性が証明された場合は,一次エンドポイントおよび二次エンドポイント(一次エンドポイント+不安定狭心症による緊急血行再建術の複合)について,アログリプチンのプラセボに対する優越性を検証することとした。

試験結果 2型糖尿病の罹患期間(中央値)はアログリプチン群7.1年,プラセボ群7.3年。平均HbA1cは両群ともに8.0±1.1%,ACS発症からランダム化までの日数(中央値)は44日,46日であった。年齢(中央値)は両群ともに61.0歳,男性の割合は両群ともに68%。

ベースライン時にCVD二次予防として投与されていた薬剤は,スタチン(アログリプチン群91% vs. プラセボ群90%),抗血小板薬(97% vs. 97%),β遮断薬(82% vs. 82%),レニン-アンジオテンシン系阻害薬(82% vs. 83%)であった。一方,糖尿病治療薬として投与されていたのは,メトホルミン(65% vs. 67%),SU薬(47% vs. 46%),チアゾリジン誘導体(3% vs. 2%),インスリン(29% vs. 30%)であった。

HbA1cは試験開始後,一貫してアログリプチン群で低下していた。追跡終了時のHbA1cの群間差は0.36%で,有意にアログリプチン群で低かった(P<0.001)。

一次エンドポイントの発生率は両群でほぼ同等であり,アログリプチンのプラセボに対する非劣性が証明された(アログリプチン群11.3% vs. プラセボ群11.8%,HR 0.96,99%片側反復信頼区間[CI]≦1.16,非劣性のP<0.001)。二次エンドポイントについても差は認められなかった(12.7% vs. 13.4%,HR 0.95,99%片側反復CI≦1.14)。一次エンドポイントと二次エンドポイントについて優越性は認められなかった。また,急性/慢性膵炎や低血糖症,腎透析,悪性腫瘍といった特記すべき有害事象について,両群間に有意な差は認められなかった。

以上の結果から,White氏は「ACSを発症した2型糖尿病患者において,標準治療へのアログリプチン追加はプラセボ追加と比較してMACEを増加させなかった」と結論し,CVDリスクの高い2型糖尿病患者において安全に血糖値を下げることの重要性を強調した。

また,discussantとして登壇したEugene Braunwald氏は,本試験の結果について「アログリプチンのプラセボに対する非劣性は認められたものの,アログリプチンがプラセボにくらべ心血管イベントを低下させないということは残念な結果だ」と評し,「心不全による入院,微量アルブミン尿,細小血管障害などに与える影響についても,今後の解析を待ちたい」と述べた。

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