SAVOR-TIMI 53 | Saxagliptin Assessment of Vascular Outcomes Recorded in Patients with Diabetes Mellitus (SAVOR)-TIMI 53 Study |
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Deepak L. Bhatt氏 |
試験背景/目的 2型糖尿病患者における血糖コントロールは,細小血管障害の抑制には有用であるものの,大血管障害のリスクに対する安全性・有用性は確立されていなかった。
選択的DPP-4阻害薬サキサグリプチンは,第II/第III相試験のプール解析では,2型糖尿病患者において主要心血管イベントの発生を56%低下させるとの結果が得られている。そこで,対象を心血管疾患(CVD)高リスクの2型糖尿病患者に限定し,標準治療にサキサグリプチンまたはプラセボを追加した場合の主要有害心血管イベント(MACE)発生率を検討した国際多施設共同ランダム化比較試験SAVOR-TIMI 53が実施された。9月2日に開催されたHot Line Session IIIにて,Deepak L. Bhatt氏(Brigham and Women's Hospital,米国)より結果が発表され,試験結果は同日,New England Journal of Medicineのonline版に掲載された。
試験プロトコール 対象は40歳以上,過去6ヵ月のHbA1c≧6.5%,CVDの既往あるいはリスク因子(男性55歳以上,女性60歳以上,脂質異常症,高血圧,喫煙)を複数有する2型糖尿病患者16492例。サキサグリプチン群(標準治療+サキサグリプチン5mg/日[腎機能障害患者は2.5mg/日])8280例,プラセボ群(標準治療+プラセボ)8212例に割り付けられた。追跡期間は2.1年(中央値)。
試験デザインはランダム化,二重盲検,プラセボ対照。一次エンドポイントは心血管死+非致死性心筋梗塞+非致死性脳梗塞の複合。サキサグリプチンのプラセボに対する非劣性の証明を目的とし,ハザード比(HR)の非劣性マージンは1.3に設定。非劣性が証明された場合は,優越性を検証することとした。二次エンドポイントは,一次エンドポイント+心不全による入院+冠動脈血行再建術による入院+不安定狭心症による入院の複合。
試験結果 CVDの既往を有する患者はサキサグリプチン群78%,プラセボ群79%で,複数のリスク因子を有する患者は22%,21%であった。両群ともに平均年齢は65歳,男性の比率は67%,糖尿病の平均罹患期間は10.3年,平均HbA1cは8.0±1.4%。
ベースライン時に投与されていた併用薬は,アスピリン(サキサグリプチン群76% vs. プラセボ群75%),スタチン(78% vs. 78%),アンジオテンシン変換酵素阻害薬(54% vs. 55%),アンジオテンシンII受容体拮抗薬(28% vs. 28%),β遮断薬(62% vs. 62%),インスリン(42% vs. 41%),SU薬(41% vs. 40%),チアゾリジン誘導体(6% vs. 6%),メトホルミン(70% vs. 69%)であった。
追跡終了時の平均HbA1cは有意にサキサグリプチン群で低下し(サキサグリプチン群7.7% vs. プラセボ群7.9%,P<0.001),HbA1c<7.0%の患者の割合は有意にサキサグリプチン群で多かった(36.2% vs. 27.9%,P<0.001)。
一次エンドポイントの発生率はサキサグリプチン群7.3%,プラセボ群7.2%で,サキサグリプチン群のプラセボ群に対する非劣性が証明されたが(HR 1.00,95%信頼区間[CI]0.89-1.12,非劣性P<0.001),優越性については認められなかった(P=0.99)。二次エンドポイントの発生率は12.8%および12.4%であった(HR 1.02,95%CI 0.94-1.11,P=0.66)。
そのほかに,プラセボ群と比較してサキサグリプチン群では心不全による入院の有意な増加(3.5% vs. 2.8%,HR 1.27,95%CI 1.07-1.51,P=0.007),低血糖症の有意な増加(15.3% vs. 13.4%,P<0.001)などが認められた。
Bhatt氏は「本研究は追跡期間が約2年と短く,サキサグリプチンの長期的な投与による心血管系への影響については明確でない」としたうえで,「CVD高リスクの2型糖尿病患者において,標準治療へのサキサグリプチン追加はMACEを増加させることも,低下させることもなかった」と結論した。
また,discussantのMichel Komajda氏は,DPP-4阻害薬と心血管イベントの関連については,TECOS試験(シタグリプチン)やCAROLINA試験(リナグリプチン)などが現在進行中であると述べ,「今回の結果は,今後それらの大規模臨床試験の結果とも比較する必要があるだろう」との見解を示した。