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[学会情報]日本高血圧学会(JSH)2013
10月24日~26日
イルベサルタンは高齢高血圧患者における微量アルブミン尿を低下させる
—Jonan Irbesartan Microalbuminuria Study(JIMS)研究グループ

2013年10月24日~26日の3日間,大阪市において第36回日本高血圧学会総会が開催された。今回のテーマは「高血圧研究と診療の進歩:最先端のその先へ」とされた。高血圧における最新の研究成果や治療のエビデンスについての議論が展開されることで,「その先の研究と診療の進歩につながること(会長挨拶より)」が期待されている。10月24日には,東邦大学医療センター大橋病院のグループより「イルベサルタンは高齢高血圧患者における微量アルブミン尿を低下させる」と題し,微量アルブミン尿を呈する高血圧患者を対象にイルベサルタンの有効性を検討した結果が発表された。

〈 要 旨 〉

微量アルブミン尿が認められた高血圧患者を対象にイルベサルタンを投与した結果,48週後に有意な血圧低下が認められた。高齢者では尿中アルブミンの低下が認められた割合が高く,年齢75歳以上が尿中アルブミン低下に関連する因子と考えられた。

◆ ◆

【10月24日・大阪】

背景と目的
微量アルブミン尿は,早期の診断と治療を行うことで慢性腎臓病(CKD)の進展の予防や,心血管疾患の減少が期待されるマーカーである。イルベサルタンはIRMA2 (Irbesartan in Patients with Type 2 Diabetes and Microalbuminuria Study) やIDNT (Irbesartan Diabetic Nephropathy Trial) といった大規模臨床試験において腎保護作用が示されているが,微量アルブミン尿に対する影響についての検討はこれまで十分に行われていない。東邦大学医療センター大橋病院の原英彦氏らは,微量アルブミン尿が認められた高血圧患者を対象とし,イルベサルタン投与による降圧効果と尿中アルブミン減少作用を検討したJonan Irbesartan Microalbuminuria Study(JIMS)の結果を,第36回日本高血圧学会総会のポスターセッションにて発表した。

原英彦氏
原英彦氏
(東邦大学医療センター大橋病院)

試験プロトコール
東京都城南地区8施設の外来に通院している高血圧患者のうち,微量アルブミン尿が認められた患者(尿中アルブミン/クレアチニン比>30mg/gCr)を対象に,降圧治療を行っていない場合はイルベサルタンの新規投与,レニン-アンジオテンシン(RA)系阻害薬以外の降圧薬が投与されている場合はイルベサルタンの併用投与,RA系阻害薬が投与されている場合はイルベサルタンへの切り替え投与を行った。投与開始時および12,24,48週目において血圧および尿中アルブミンの測定を行った。

結果
〈患者背景〉 対象患者70例の平均年齢は69.5歳(75歳以上は23例),男性は60%,平均BMIは25.6kg/m²。降圧薬を3種類以上服薬していた患者は17.1%,糖尿病罹患率は52.9%,CKD診療ガイド2007で定義されたCKDステージ1の割合は8.5%,ステージ2は47.5%,ステージ3は40.7%であった。
〈血圧〉 イルベサルタン投与により,平均収縮期血圧は投与開始時の140.0±3.4mmHgから48週後は131.8±3.4mmHg,平均拡張期血圧は78.8±2.6mmHgから73.9±2.6mmHgとなり,いずれも有意に低下した(P<0.001,線形混合モデルに よる対比較)。75歳以上と75歳未満で比較すると,75歳以上では収縮期血圧の低下が有意に大きく(48週後の変化量:75歳以上 −14.2±16.5mmHg vs. 75歳未満 −3.2±18.0mmHg,P=0.02,t検定),有意差はみられないものの,拡張期血圧の低下も大きい傾向にあった(−7.4±10.4mmHg vs. −3.2±9.5mmHg,P=0.12,t検定)。
〈微量アルブミン尿〉全体の52.4%に尿中アルブミンの低下が認められたが,75歳以上では83%と,より高い割合で尿中アルブミンの低下が認められた。48週後の尿中アルブミンの変化量は,全体では平均−47 mg/gCrであったが,75 歳以上では平均−155 mg/gCr であった。48週後の尿中アルブミン低下に関連する因子について単変量解析を行ったところ,75歳以上ではオッズ比が0.39(95%信頼区間0.131-1.157,P=0.09)であったため,年齢75歳以上と尿中アルブミン低下の関連が示唆された。続いて行った多変量解析の結果では,75歳以上でのオッズ比は0.346(95%信頼区間0.122-0.979,P=0.046)であり,年齢75歳以上と尿中アルブミン低下の有意な関連が認められた。
〈結論〉微量アルブミン尿が認められた高血圧患者において,イルベサルタン投与は48週時点で良好な降圧作用を示した。また,48週後の尿中アルブミン低下と有意に関連する因子として年齢75歳以上が示された。これについて原氏は,「75歳未満の患者とくらべて,75歳以上の患者では収縮期血圧が顕著に低下したことが影響しているのではないか」との見解を述べた。

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