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[学会情報]第2回臨床高血圧フォーラム
5月25日,26日
編集部が選ぶ注目演題
2型糖尿病合併高血圧患者におけるイルベサルタンの降圧効果と腎保護作用 —東京歯科大学市川総合病院グループ

第2回臨床高血圧フォーラム(会長:伊藤裕氏・慶應義塾大学)が2013年5月25日,26日に東京・丸の内のJPタワーホール&カンファレンスで開催された。今回の臨床高血圧フォーラムは,臨床医家,臨床高血圧医療に関わるすべての医療従事者,なによりも高血圧を患う市民へ,広く高血圧に関するメッセージを発信し,「明日の臨床高血圧の進路をともに見つけ(会長挨拶より)」ることを目指して,「臨床高血圧ノススメ」を学会テーマとしている。5月26日には,東京歯科大学のグループより「2型糖尿病合併高血圧患者に対するイルベサルタンの腎保護作用の検討」と題し,イルベサルタンの降圧効果,腎保護作用を検討した結果が発表された。

〈 要 旨 〉

2型糖尿病合併高血圧患者18例を対象として,イルベサルタン新規投与,切り替え投与の降圧効果,腎保護作用について検討した。イルベサルタン投与後24週で収縮期血圧は有意に低下し,尿中アルブミンも低下した。腎機能の指標である血清シスタチンCの上昇がみられたが,これは併用薬の影響を受けた可能性が考えられた。

◆ ◆

【5月26日・東京】

背景と目的
 『高血圧治療ガイドライン2009』では,2型糖尿病を伴う高血圧患者の血圧コントロールには,レニン・アンジオテンシン系抑制薬が推奨されている。そのなかでもイルベサルタンはIRMA2 (Irbesartan in Patients with Type 2 Diabetes and Microalbuminuria Study) やIDNT (Irbesartan Diabetic Nephropathy Trial) といった大規模臨床試験において,腎保護作用を示している。しかし,欧米と日本ではイルベサルタンの承認用量に乖離があり,国内承認用量で同様の結果が得られるかどうかは明確ではない。東京歯科大学市川総合病院の大久保佳昭氏らは,イルベサルタンの国内承認用量での腎保護作用を検討するため,降圧目標値130/80mmHgを達成できていない2型糖尿病患者に対する,イルベサルタン投与後24週の尿中アルブミン値,血清シスタチンC値,BNP値の変化量と降圧効果を検討した結果を,第2回臨床高血圧フォーラムのポスターセッションにて発表した。

大久保佳昭氏
大久保佳昭氏
(東京歯科大学市川総合病院)

試験プロトコール
 東京歯科大学市川総合病院外来に通院中の2型糖尿病合併高血圧症例に対して,イルベサルタン100mgの新規投与,もしくは他のARBからイルベサルタンへの切り替え投与を行なった。追跡期間は,イルベサルタン投与後24週で,投与開始時,12週後,24週後に血圧測定,血液検査,尿検査を実施し有効性を評価した。

結果
対象は18例(男性9例,女性9例),年齢は63.7歳,BMI 24.4±3.8kg/m²,イルベサルタン新規投与16例,切り替え2例,糖尿病治療はインスリン投与5例,GLP-1アナログ2例,経口血糖降下薬11例であった。
〈血圧〉 イルベサルタン投与により平均収縮期血圧は開始時の153.2 mmHgから12週後に138.6 mmHg(P<0.01,paired t検定),24週後132.4 mmHg(P<0.001,paired t検定)と有意な低下を認めた。拡張期血圧も投与前の78.4mmHgから12週後に73.8mmHg,24週後73.6mmHgと低下していたものの統計学的な有意差は認めなかった。
〈腎保護作用〉 また尿中アルブミンについても,開始時 58.3 mg/gCr,12週後39.0 mg/gCr,24週後28.6 mg/gCr(P<0.05,paired t検定)と有意な低下を認めた。
 一方で,血清シスタチンCは有意な上昇(開始時0.72 mg/L,12週後0.72 mg/L,24週後0.77mg/L,P<0.01,paired t検定)を認めた。この血清シスタチンCの上昇に関して,併用薬との関連を調べたところ,腎排泄型のDPP-4阻害薬を併用していた9例はそれ以外の9例に比して,血清シスタチンCが増加する傾向がみられた(P=0.08,Mann Whitney検定)。観察期間中,体重,HbA1c,BNPに関しては有意な変化は認められなかった。
〈結論〉 2型糖尿病合併高血圧患者において,イルベサルタン投与は,12週,24週で良好な降圧作用を示した。腎保護作用に関しては,尿中アルブミンが低下したのに対して,血清シスタチンCは上昇し一定の傾向は認められなかった。この血清シスタチンCの上昇に関してはDPP-4阻害薬併用の影響が考えられたため,今後のさらなる検討を要すると,大久保氏は述べた。

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