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[学会情報]欧州心臓病学会(ESC)学術集会2014
(2014年8月30日~9月3日 in バルセロナ)
<Hot LineⅠ>
CONFIRM HF Ferric CarboxymaltOse evaluatioN on perFormance in patients with IRon deficiency in coMbination with chronic Heart Failure
鉄欠乏の心不全患者に対する静注による鉄分補給が,心機能分類およびQOLの改善と,心不全悪化による入院リスク減少をもたらす
【8月30日・バルセロナ】

心不全患者では貧血の有無に関わらずしばしば鉄欠乏が認められ,これが心機能分類や生活の質(QOL)の低下,死亡率の上昇と関連していることが最近報告されている。そこでCOFIRM HF試験では鉄欠乏の是正が治療標的になるかどうか検討された。Hot LineⅠで治験責任者のPiotr Ponikowski氏(Medical University in Wroclaw, ポーランド)が結果を発表した(同日Eur Heart J誌に掲載)。

対象者は欧州の9ヵ国41施設の,鉄欠乏(血清フェリチン値<100ng/mL,または100~300ng/mLでトランスフェリン飽和率<20%)を呈する安定性症候性心不全患者304例。鉄分(カルボキシマルトース鉄溶液)静注群とプラセボ群(生理食塩水静注)に二重盲検で無作為に割り付けされ,鉄分静注群では患者の体重やヘモグロビンに応じてDay 0および6,12,24,36週時に1または2バイアル(=鉄分500mgまたは1,000mg)が投与された。しかし実際には75%以上の患者が鉄分量維持のために2バイアル2回の静注を要したため,1機会の鉄分静注量は1年間を通して1,500mg(平均値および中央値)であった。

24週後の6分間歩行(一次エンドポイント)は鉄分静注群で33m長く(鉄分静注群+18±8m vs プラセボ群−16±8m[いずれも最小二乗平均±標準誤差],P=0.002),36週時点では42m,52週時点では36m長かった(いずれもP<0.001)。「6分間歩行における鉄分静注の有効性は,臨床的に非常に意義のあるものだ。このようなベネフィットはこれまで心臓再同期療法でしか認められなかった」とPonikowski氏は述べた。

また12週以降,Patient Global Assessment,NYHA心機能分類の有意かつ持続的な改善が認められた。疲労スコア,QOL(KCCQ,EQ-5D)もプラセボ群にくらべて鉄分静注群で有意に改善。心不全悪化による入院もプラセボ群にくらべて61%減少した(P=0.009)。しかし死亡率について両群で差は検出されず,これについてPonikowski氏は「死亡率の差を検出するには追跡期間が短すぎた可能性が考えられる」と述べた。

そして「現在のESCガイドラインでは心不全管理における鉄欠乏について"関連のある併存疾患であり常に検査する必要がある"としているが,鉄分補給の効用については確固としたエビデンスが少ないため,強い推奨を記していない。心不全患者の鉄欠乏は治療標的であると強く推奨するにはさらなる臨床試験が必要であるものの,本試験の結果は2016年に発行される予定のESCガイドラインにおいて重要な意義をもつだろう」と結んだ。

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