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[学会情報]第37回日本肥満学会
2016年10月7~8日
肥満症診療ガイドライン2016
—改訂のポイントとこれからの肥満症診療

2016年10月7~8日の2日間,東京ファッションタウンにおいて第37回日本肥満学会が開催された。今年のテーマは「ビジョナリー肥満症学 —基礎から臨床,そして社会へ」。これからの肥満症診療のビジョンを展望する学術集会に,という大会長・小川佳宏氏(東京医科歯科大学)の思いが込められたさまざまなセッションが催された。

ここでは,今春改訂された肥満症診療ガイドラインについてガイドライン作成委員がそれぞれの担当章を解説したシンポジウム「肥満症診療ガイドライン2016:改訂のポイントとこれからの肥満症診療」(司会:宮崎滋氏[公益財団法人結核予防会総合検診推進センター],横手幸太郎氏[千葉大学大学院医学研究院細胞治療内科学])の概要を紹介する(編集部)。

(Therapeutic Research 2016年10月号掲載予定)

会場
改訂のポイント

 ガイドライン作成委員長を務めた宮崎氏は,2016年版の特徴として,肥満症を疾患単位として明確に取り扱い,「肥満症(25≦BMI<35で,健康障害または内臓脂肪蓄積あり)」と「高度肥満症(BMI≧35で,健康障害または内臓脂肪蓄積あり)」を明確にわけて診断,治療するようになった点を挙げた。減量目標として,肥満症では現体重からの3%減少,高度肥満症では5~10%減少が掲げられている。

判定基準の根拠

 中村正氏(医療法人川崎病院糖尿病内分泌科)は,国民栄養調査2006年版のデータにおいて,高度肥満の該当者は男性0.2%,女性0.3%であったことを紹介。それほどに多くはないものの,高度肥満症は肥満症と病態も異なり,治療にも異なる対応が必要とされ,明確に区分して扱うこととなったと述べた。そして,肥満の判定基準がBMI≧25であることや,内臓脂肪型肥満の判定基準が内臓脂肪面積≧100cm²でそれを推定するウエスト周囲長が男性85cm,女性90cmであることの根拠,メタボリックシンドロームと肥満症の違い,マルチプルリスクファクター症候群の頻度の男女差などが,ガイドラインで詳しく説明されていることを紹介した。

疫学研究の章が新設

 今回のガイドラインでは新たに,疫学の章が設けられている。宮本恵宏氏(国立循環器病研究センター予防検診部)は,肥満における食生活(低脂質食 vs 低炭水化物食,高蛋白食 vs 低蛋白食),飲酒,運動,睡眠,喫煙/禁煙などの疫学研究が示され,エビデンスレベルが3段階で評価されたことを紹介。そして,1)肥満に関する要因(成因)や,肥満の健康障害への影響は明らかである,2)年代,時代,出生時期により肥満の割合を調べると男女差がある,3)地理的な肥満の割合に差があり,地域に合った対策が必要である,と概略をまとめた。

チーム医療が不可欠

 横手氏は,ガイドラインで示された肥満症,高度肥満症の食事療法,運動療法,行動療法,薬物療法,外科療法について,自院の事例も交えて紹介。合併症や心理的,社会的問題に対応する必要があるため,肥満症の改善は医師一人でできるものではなく,管理栄養士,看護師,臨床心理士,ソーシャルワーカー,そして患者側も家族や介護者も含めて,一丸となって取り組んでいく必要があることを強調し,コメディカルにも是非ガイドラインを活用して欲しいと述べた。

合併疾患の治療

 山内敏正氏(東京大学医学部糖尿病・代謝内科)は,肥満症に合併する疾患(耐糖能障害,脂質異常症,高血圧,高尿酸血症,冠動脈疾患,脳梗塞,非アルコール性脂肪性肝疾患,女性の肥満[肥満妊婦,月経異常],睡眠時無呼吸症候群,運動器疾患,肥満関連腎臓病,悪性疾患[がん],良性疾患[胆石症,静脈血栓症・肺塞栓症,気管支喘息,皮膚疾患,男性不妊,胃食道逆流症],精神疾患)の治療に関する改訂のポイントを紹介した。今後の検討課題として,減量効果のある糖尿病治療薬の肥満症における位置づけ,BMI以外の肥満評価指標(内臓脂肪量)の必要性の有無,内科以外の領域の肥満合併症のエビデンス蓄積,減量治療(糖質調整食,薬物療法,減量手術など)による肥満合併症の改善効果や副作用に関する検証を挙げ,全国的な肥満症データベースの構築が必要であると述べた。

 欧米では体重やBMIを基準に肥満症を定義しており,内臓脂肪を念頭におく日本とは基本的な概念が異なる。フロアからは,自身の研究を発表するにあたり,日本の概念や定義を引用する際に必要となることから,日本のガイドラインの英訳版作成を要望する声が上がった。

 

【関連書籍】
肥満症診療ガイドライン2016
編集 日本肥満学会

photo:本:肥満症診療ガイドライン2016 あらゆる疾患に肥満が関連。肥満症治療で一挙に改善!
BMI≧25の「肥満」から医学的に減量を要する「肥満症」を選び出し,適切に治療・管理するための手引き。

ライフサイエンス出版刊 ISBN 978-4-89775-343-0
A4変形版  152 頁 定価(2,200 円+税)

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