ランダム化試験(RCT)では,中間解析で有意な差がみられたために,早期終了となることが,しばしばある。しかし,早期中止された場合,そのRCTで示される治療効果は実際よりも高い方に誇張されてしまうことが,Basslerらの行ったメタアナリシスによって明らかとなり,2010年3月のThe Journal of the American Medical Association誌に報告された[PubMed]。
この論文では,MEDLINE,EMBASE,Current Contents,ジャーナルのフルテキストデータベース,Cochran Database of Systematic Reviews,Database of Abstracts of Reviews of Effectsから,2007年までの早期中止RCTと,2008年までのRCTのシステマティック・レビューを検索。その結果,早期中止RCTは91試験,同じ項目を検討した非早期中止RCT(対照RCT)は424試験であった。
両者の統合相対リスク比は0.71(95%信頼区間 0.65-0.77)であり,イベント数が500以下の場合に,治療効果サイズに差が認められた(相対リスク比<0.75)。
この結果から,早期中止RCTでは,対照RCTに比べ,治療効果が誇張され,とくに小規模の試験において顕著である,と結論づけられている。
分析結果の数値をみると,治療効果があった場合,例えば対照RCTの相対リスクが0.8であれば,リスク低下率は20%であるが,これを早期中止RCTにあてはめると,相対リスクは0.57であり,リスク低下率は43%と,早期中止をしなかった場合の約2倍となる。また,対照RCTでまったく治療効果のなかった場合でさえ,早期中止RCTでは,29%の相対リスク減少率を示すことになる。
しかし,全比較のうち,2/3では早期中止RCTと対照RCTで有意な差が認められなかった。こうした分析結果のばらつきは,早期中止RCTでのアウトカムのイベント数が大きく影響していると推察される。イベント数が少ないほど,両者のアウトカムの差は大きくなり,早期中止RCTでは治療効果が誇張されるとしている。
データの精確さを保つため,試験の早期中止にはコンセンサスによる規定が設けられている。しかし,今回の解析では,そうした規定を満たしていながらも,早期中止によるバイアスがかかりうることが示唆された。論文のなかでBasslerらは「今回の結果から,臨床試験を早期中止する場合,多数のイベントが発生していなければならないことが示された。臨床医は,早期中止された試験では,このように,治療効果が過大評価されている可能性を考慮にいれる必要がある」と提言している。