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[トピックス] 日本ベーリンガーインゲルハイム・日本イーライリリー プレスセミナー
DPP-4阻害薬に何を期待するのか

新しい作用機序をもつ糖尿病治療薬,インクレチン製剤には高い関心が寄せられている。10月18日,日本で4成分目となるDPP-4阻害薬,リナグリプチン(商品名:トラゼンタ®)の発売記念記者会見が都内にて開催された。リナグリプチンは,初の胆汁排泄型DPP-4阻害薬で,腎機能・肝機能が低下した患者にも同一用量で投与可能であるという。では,DPP-4阻害薬に専門医はなにを期待するのか。同剤の共同販促を行う日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社・日本イーライリリー株式会社主催により,河盛隆造氏(順天堂大学)の講演が行われた。

DPP-4阻害薬の新規作用

インクレチンは,小腸から放出される消化管ホルモン(グルカゴン様ペプチド-1[GLP-1],グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド[GIP])であり,消化管から栄養素が取り込まれると放出され,インスリン分泌を促し,ジペプチジルペプチターゼ-4(DPP-4)によってすばやく分解される。そのDPP-4を阻害する薬剤がDPP-4阻害薬である(関連記事)。

糖尿病は,進展してから受診する患者さんが多く,多くの医師は糖尿病が徐々に進展していくのは抑えられないと感じている。しかし河盛氏らの研究(Kawamori D, et al. Diabetes. 2003; 52: 2896-904.)によると糖尿病の膵β細胞は自然に機能を失っていくのではなく,高血糖である状態こそがβ細胞の機能を失わせている原因であるという。

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河盛隆造氏

そこで早期に治療を開始し,高血糖状態を是正することこそが大切になるが,これまでの治療薬のターゲットは膵β細胞からのインスリンの分泌促進や感受性の改善であった。これに対し,DPP-4阻害薬などのインクレチン製剤は,インスリン分泌を促進することに加え,α細胞でのグルカゴン分泌を制御することで,門脈でのインスリン,グルカゴン,ブドウ糖のバランスを整えることが期待できる。

GLP-1は,食後や血糖上昇時にのみ膵β細胞を刺激することで,門脈へ素早くインスリンを供給し,肝臓でのインスリンの働きを高めることで肝臓での糖取り込み率を上昇させる。また,GLP-1がα細胞を刺激することでグルカゴンの分泌を抑制し,肝臓からの糖放出率を下げる。

インスリン分泌能を保持する治療へ

このように門脈内でのブドウ糖,インスリン,グルカゴンのバランスを改善することが特に肝臓での糖の取り込みを促進させ,食後血糖応答を正常化し,膵β細胞の機能を維持する循環を再現することが期待される。DPP-4阻害薬などのインクレチン製剤の承認・発売により,インスリンとグルカゴン,2つのホルモンのバランスを整えることが可能になると考えられ,糖尿病を発症する前の健康な状態に近づける治療が現実のものとなりつつある。

高血糖である状態が膵β細胞を障害することを強調したうえで,河盛氏は「糖尿病治療においては,早期介入により一刻も早く高血糖を改善することが重要であり,その手段としてDPP-4阻害薬は有用であると考えています。また,動物実験の段階ですが,DPP-4阻害薬は膵β細胞機能の回復や細胞量の増大をもたらす可能性もあります」とさらなる期待を寄せた。

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