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[トピックス] 医療者自身によるユーザーメードITシステムの可能性
J-SUMMITS Special Seminar・仙台で開催
二足のわらじ–wear two hats–の医療者によるセミナー:震災対応も題材に
WearTwoHats

2012年6月8日,仙台において日本ユーザーメード医療IT研究会(J-SUMMITS: Japanese Society for User-Made Medical IT System)によるスペシャルセミナーが開催された。今回のセミナーは医師,看護師,医療情報技師が対象であり,幅広いテーマで講演が行われた。また,震災復興と,災害時の対策をテーマとした講演も行われた。

J-SUMMITSは,医療に直接携わっている医療者自身によって,医療のITシステム構築を目指して設立された研究会。医師,薬剤師をはじめとする医療従事者によって構成されているが,メンバーの中には本職のプログラマーをしのぐ技術を持つ人も少なくない。

このスペシャルセミナーでは,演者は登壇すると,座長から渡された帽子をかぶって講演した。J-SUMMITSのメンバーは医療者としての仕事を行いながら,医療現場のITシステムを構築している。そのような自分たちを表現する方法としてえらばれたのが帽子。二足のわらじ,一人二役のことを英語では“wear two hats”というのだという。講演は,その帽子をかぶりながら行われた。

少ない情報から該当する薬剤を見つけ出す
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パネルディスカッションでは,フロアからよせられたシステム構築の基本的な質問などにも答えた

震災に関連しては,まさしくそのただなかにいた東北大学病院から,國井重男氏がその対応について講演を行った。また,阪神大震災の経験から今回の震災で災害時病院情報統合管理システムMedPowerを作り上げた名古屋大学の吉田茂氏による講演も行われた。

事例紹介のなかで徳島大学・木村敦氏によって紹介された薬剤識別支援システムは,薬剤の色,剤形,文字列,あるいはPTPシートの色などから薬剤を探索するもの。木村氏が薬剤探索のデモを行い,数ステップで目的の薬剤が表示されると,会場から感心の声が上がった。昨年の震災後,処方箋などが失われたために,慢性疾患患者の常用薬の特定に難渋したケースもあるといわれている。このシステムによって,患者の覚えている情報などから薬剤を特定することもできると考えられる。さらに木村氏はiPhoneの音声認識・入力機能を利用した薬剤検索などをデモし,将来の可能性を示した。

そのほか,事例紹介では,医療現場での工夫として,手術説明・同意書冊子化ツールや,診断書作成支援システム,電子カルテとデータベースソフトFileMakerとの連携,病理部門におけるFileMakerの活用,紙カルテを意識した電子カルテシステム,ベンダー性電子カルテを包括するユーザーメードシステム,さらに基幹システムとのリアルタイム連携などが紹介された。いずれも“wear two hats”という負荷のかかる環境で作られたものながら,非常に高度なシステムであった。

今後,医療現場のIT化は着実に進むであろうが,医療者の要求を十分に組み入れたシステムをつくるためには,このようなユーザーメードの発想こそが重要と思われた。

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