一般にエビデンスレベルが高いとされるランダム化比較試験(RCT)でも,「追跡不能例」に生じるイベント如何でその結論が変わりうることを,Elie A Akl氏らが指摘した。同氏らは,トップジャーナル5誌に投稿された有意差のあるRCTをシステマティックレビューにより解析。その結果,最大で58%のRCTで有意性が失われることがわかった。5月18日付のBMJに掲載された(BMJ. 2012 May 18;344:e2809. doi: 10.1136/bmj.e2809. [PMID])。
解析対象は,Annals of Internal Medicine,BMJ,JAMA,Lancet,New England Journal of Medicineで,「有意差あり」と結論づけられた235のRCT。今回の解析では,一次エンドポイントの確認が不完全であった対象者を「追跡不能例」と定義した。各RCTの原著者らが解析から除外した症例でも,一次エンドポイントのデータが提示されていた場合,本解析では「追跡不能」としない。
追跡不能例における一次エンドポイント発生率を,
【1】 0%と仮定した場合
→19%のRCTでその結果の有意性が消失
【2】 100%と仮定した場合,
→17%のRCTでその結果の有意性が消失
【3】 治療群を100%,対照群を0%と仮定した場合(最悪のシナリオ),
→58%のRCTでその結果の有意性が消失
なお,全235件のRCTのうち,13%では追跡不能例についての記述がなかった。記述のあったRCTにおける追跡不能例の割合は6%(中央値)。そのなかには追跡不能の扱いが不明確なRCTが19%含まれた。
著者らは,追跡不能例で起こりうる治療成績をどう仮定するかが重要であり,そのモデルを作成するためには,追跡不能例の経験的データを収集・分析することが必要だと述べている。