栄養不良状態にある人は,世界におよそ10億人。その多くが下痢や腸炎などを併発し,死に至るリスクにさらされている。これまで,栄養不良によるアミノ酸欠乏が,ナイアシン欠乏症(ペラグラ)を引き起こし,これが下痢や腸炎などを誘発すると考えられてきたが,詳細な分子メカニズムは不明だった。横浜市立大学循環器・腎臓内科学(梅村敏教授)の橋本達夫助教らの研究グループは,今回,レニン-アンジオテンシン(RA)系の構成因子であるACE2が腸炎発症を制御していることを明らかにした(Nature 2012;487:477-481[PubMed])。
同グループは,ACE2欠損マウスでは腸上皮ダメージによる腸炎が起こりやすくなることを証明。これまでRA系の構成因子として捉えられてきたACE2が,RA系とは独立に,腸におけるアミノ酸の恒常性,抗微生物叢ペプチドの発現,腸の微生物群の生態系の調整などの機能を備えているという予想外のメカニズムを明らかにした。また,同マウスにおいてペラグラ治療薬であるニコチンアミドが腸炎の起こしやすさを弱めたことから,ACE2依存性の腸上皮の免疫や微生物叢の変化は,食事由来のトリプトファン(ナイアシン生合成の原料となる)により直接的に制御されているものと考えられる。
今後は,どのようなアミノ酸が腸内環境維持に必要なのか,腸炎を含むさまざまな病態での解析が期待される。この研究成果はNature誌7月26日号に掲載され,表紙を飾った。
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