心房細動(Atrial Fibrillation:AF)患者を長期間追跡した結果,レートコントロール治療よりもリズムコントロール治療が優れていたと,Raluca Ionescu-Ittu氏らが報告した。6月4日付のArchives of Internal Medicine電子版に掲載された(Arch Intern Med. 2012;172:997-1004.[PubMed])。近年の臨床試験では,両治療法に差のないことが示されており,それらと異なるものとなっている。
対象はカナダ・ケベックで1999年1月~2007年3月に新規にAFと診断され入院した,66歳以上の患者。そのうち,入院の前年にはAF治療薬を処方されておらず,退院後7日以内に投薬を開始した26,130例(リズムコントロール治療:6,402例,レートコントロール治療:19,728例)を平均追跡した。
その結果,治療開始6ヵ月後ではリズムコントロール治療で死亡率がわずかに上昇し(ハザード比[HR]1.07,95%信頼区間[CI] 1.01-1.14),4年後までは両治療の死亡率は同等だったが,5年後以降はリズムコントロール治療で死亡率が低下した(5年後[HR 0.89,95%CI 0.81-0.96],8年後[HR 0.77,95%CI 0.62-0.95])。
これまでに発表された試験と本研究の結果が異なる理由として,著者らは,臨床試験に参加した患者は一般的な患者のリスクプロフィールや治療アドヒアランスを反映した症例ではなく,そのことが治療効果の評価に影響した可能性を指摘している。実際,AFの臨床試験では,男性,合併症が少ない症例がおもな対象となるが,本研究では女性や心血管疾患の合併例も多く含まれている。しかし,どの程度,患者特性が治療効果に影響するかは不明とも言及している。
また,治療レジメンの違いも研究結果に反映された可能性があるとされている。本研究では,レートコントロールの56%にβ遮断薬が用いられたが,AFFIRM試験では47%であった。リズムコントロールについてもアミオダロンが処方されたのはAFFIRM試験では51%,本研究では37.5%であった。さらに,他の試験と比べて本研究では治療法のクロスオーバーの割合が高かったこともポイントとされている。どの患者にどの治療法を選択するかは,臨床試験とリアルワールドで差があるとされており,AFFRIM試験では,AF治療の開始がリズムコントロールであった症例は54.1%であったが,本研究では37.5%にとどまっていた。
本検討は観察研究であり,臨床試験のように交絡因子のコントロールができていないという限界はあるものの,著者らは“治療開始5年後以降はレートコントロールよりもリズムコントロールのほうがベネフィットがある”ことが本研究から示されたと結んでいる。