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[トピックス] 
厳格降圧と標準降圧による心血管リスク低下の差はわずか
— 2型糖尿病患者に対する降圧目標について検討したメタ解析 —

降圧目標値を検討したランダム化比較試験(RCT)についてシステマティックレビューとメタ解析を行った結果,2型糖尿病患者に対する厳格降圧が標準降圧よりも死亡と心筋梗塞(MI)のリスクを低下させるエビデンスは得られなかったとKerry McBrien氏らが報告した。8月6日付のArchives of Internal Medicine電子版に掲載された(Arch Intern Med. 2012 Aug 6:1-8. doi: 10.1001/archinternmed.2012.3147.,PubMed )。

著者らは5つのRCTを対象に,2型糖尿病患者に対する厳格降圧目標(130/80mmHg以下)が標準降圧目標(140-160/85-100mmHg以下)と比較して死亡,MI,脳卒中のリスクを低下させるかについて解析した。

その結果,死亡(リスク比[RR]0.76,95%CI 0.55-1.05)とMI(RR 0.93,95%CI 0.80-1.08)の相対リスクに有意な低下は認められず,絶対リスクにも有意な差は認められなかった。一方,脳卒中の相対リスク(RR 0.65,95%CI 0.48-0.86)と絶対リスク(絶対リスク差 −0.01,95%CI −0.02-0.00)は有意に低下していた。

著者らは解析対象の試験間の不均一性などを考慮したうえで,「標準降圧と比較した厳格降圧のベネフィットは不明確で,脳卒中でのわずかな絶対リスク低下に限られる」と述べている。

なお,同時に掲載されたコメンタリーで,Pantelis A. Sarafidisらが本解析について言及した(Arch Intern Med. 2012 Aug 6:1-2. doi: 10.1001/archinternmed.2012.4020.,PubMed)。解析対象が5試験のみであることや,標準降圧群で目標値よりも低い値を達成した試験が含まれていることなどの限界を指摘しつつも,本解析や過去の前向き研究の結果をあわせると「新しいガイドラインでは,糖尿病患者の降圧目標はおそらく140/90mmHg未満となるのではないか」と述べている。

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