ホーム   >  トピックス   >   2013年のトピックス   > 腎機能が良くなっても悪くなっても全死亡リスクが増加 — eGFRの経時的な変化による死亡リスクへの影響について検討した研究 —
[トピックス] 
腎機能が良くなっても悪くなっても全死亡リスクが増加
— eGFRの経時的な変化による死亡リスクへの影響について検討した研究 —

経時的な腎機能の変化と全死亡リスクとの関連を検討した結果,U字型の関連がみられたことをTanvir C. Turin氏らが報告した。Kidney International誌の4月号に掲載された(Kidney Int. 2013; 83: 684-91. doi: 10.1038/ki.2012.443., PubMed )。

著者らはAlberta Kidney Disease Networkのデータを用い,推算糸球体濾過量(eGFR)の年間変化量および変化率と全死亡リスクとの関連を検討した。対象はカナダ・アルバータ州の18歳以上の男女で,2002~2007年に外来で少なくとも3回以上の血清クレアチニン値測定を実施した52万9312人。追跡期間中央値は2.5年。

その結果,eGFRの絶対値が減少していた人のみならず,増加していた人においても,全死亡リスクの有意な増加が認められた(vs 変化なし)。eGFRが5mL/min/1.73 m²以上増加した人の全死亡のハザード比は,変化なしに比して2.20(95%信頼区間[CI]2.10-2.31),5mL/min/1.73 m²以上減少した人では1.52(95%CI 1.46-1.57)であった。これらの結果は,絶対値変化の代わりにeGFRの年間変化率を用いた検討でも同様であった。

eGFRの増加が死亡リスクと関連した理由について,著者らは,慢性的な衰弱状態にともなう筋肉量の減少によって一部の人で血清クレアチニン値が低めに出た可能性や,急性腎障害からの回復が交絡要因となった可能性を挙げ,「eGFRの増加は,死亡の独立した危険因子というより病気にかかった状態のマーカーかもしれない」と述べている。

同時に掲載されたコメンタリー(Kidney Int. 2013; 83: 550-3. doi: 10.1038/ki.2012.432., PubMed )において,Nishank J氏らは「この研究は,eGFRの経時変化が死亡リスクとU字に関連するという論理的かつ刺激的な仮説をもたらした」としながらも,eGFRの増加による死亡リスクへの影響について,早期の慢性腎臓病(CKD)でみられる過剰濾過(hyperfiltration)が関与した可能性や,今回の研究では不可能であったBMIなどの身体測定指標による調整の必要性を指摘し,「今回の結果からはっきりとした理由を説明することはできない」と述べた。

なお,関連する知見として,3月に横浜で開催された第77回日本循環器学会学術集会において,岩手県北地域コホート研究から,ベースライン時のeGFRが全死亡リスクとU字型の関連を示すことが報告された(詳細はこちら:循環器疫学サイト epi-c.jpへ移動)。

▲このページの上へもどる