2013年5月16日,熊本で開催された第56回日本糖尿病学会年次学術集会において,日本糖尿病学会は糖尿病治療の新たな目標値を発表した。合併症を予防するためのHbA1c目標値を7%未満とし,患者の状況にあわせて6%未満または8%未満も設定可とした。2013年6月1日より運用を開始する。
![]() 日本糖尿病対策推進会議,日本糖尿病学会,日本糖尿病協会が作成したHbA1cの表記統一に関するパンフレットおよびポスター。2014年4月1日からの表記統一にむけて,患者さんや医療従事者に広く知らせることを目的として,さまざまなツールを準備している。 |
これまでの血糖コントロール基準は“優”,“良”,“可(不十分または不良)”,“不可”とされていたが,分類が複雑であり,患者中心の治療を目指す現在の動向とはそぐわないとする意見が寄せられていた。今回設定された新たな血糖コントロール目標では,このような状況に即して,HbA1c目標値を6%未満,7%未満,8%未満の3段階にした。6%未満は「血糖正常化を目指す際の目標」で,適切な食事療法や運動療法だけで達成可能な場合,または薬物療法でも低血糖などの副作用がなく達成可能な場合の目標とされる。「合併症予防のための目標」とされる7%未満は,空腹時血糖130mg/dL未満または食後2時間血糖値180mg/dL未満に対応する。大規模臨床研究であるUKPDSやKumamoto studyから合併症抑制のエビデンスが得られた値であり,米国糖尿病学会や欧州糖尿病学会での推奨値でもある。8%未満は「治療強化が困難な際の目標」であり,低血糖などの副作用や,その他の理由で治療の強化が難しい場合の目標で,すべての患者が目指すべきとされる。いずれも成人に対しての目標値であるが,妊娠糖尿病は除く。 新たな目標値は6月1日より運用開始となり,日本糖尿病学会のホームページでは,医療関係者や糖尿病患者に普及をはかるためのポスターやリーフレットが掲載されている。
また同日に開催されたセッション「新たなHbA1c目標値についての特別声明」において,日本糖尿病学会は「熊本宣言2013」を発表。合併症予防のため, HbA1c値を7%未満に保つことを呼びかけるもので,「あなたとあなたの大切な人のためにKeep your A1c below 7%」をキャッチフレーズとしている。
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