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[トピックス] 
高血圧治療ガイドライン2014が出版される
–––2009年版から5年ぶりの改訂。

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2014年4月1日,日本高血圧学会から「高血圧治療ガイドライン2014」が発行された。本改訂は関連学会や医師会,患者団体のリエゾン委員を含め151名からなる作成委員会によって作成され,原案に対し,作成過程では学会員以外のほか一般からも広く意見が募集された。作成委員会(委員長:島本和明氏[札幌医科大学学長・理事長])は一般から寄せられた16件22項目の意見すべてに対して電話やメールで回答したという。島本氏は「広く,多くの方に納得していただいたうえで作成した」とし,透明性の高いガイドラインであることが強調された。

とくに強調したい重要な変更点として島本氏があげたのは下記の6点。
1)家庭血圧は朝夕2回,1機会で2回測定し平均値を評価。診断が異なる場合は診察室血圧よりも家庭血圧を優先
2009年版で課題とされた,家庭血圧の測定回数(1~3回)と評価する値(1機会第1回目の値)の齟齬について本改訂で整合性が図られ,家庭血圧は朝夕2回,1機会で2回測定しその平均値を評価することが推奨されることになった。2回の血圧差が大きい場合など3回目を測定したときは3回の平均値をとって評価するが,不要な不安を助長するとの理由から4回以上の測定は推奨しないことも明記された。血圧値の信頼性は「24時間自由行動下血圧 > 家庭血圧 > 診察室血圧」の順。
2)至適血圧,正常血圧,正常高値血圧の総称を「正常域血圧」に
これまで,至適血圧(<120/80mmHg),正常血圧(120~129/80~84mmHg),正常高値血圧(130~139/85~89mmHg)をまとめて「正常血圧」と総称していたが,120~129/80~84mmHgを指す正常血圧との混乱があったため「正常域血圧」に改称された。
3)合併症のない場合の第一選択薬は,主要降圧薬のうちβ遮断薬を除く4種
β遮断薬は依然として主要降圧薬の一つであるが,とくに脳卒中抑制に関して他剤に劣るとの国内外のエビデンスから,合併症のない場合の第一選択薬からは除外された。ただし,狭心症,心筋梗塞後,心不全などの心疾患合併患者に対しては積極的な適応となる。
4)降圧目標は,糖尿病・CKD(蛋白尿[+])で<130/80mmHg,若年・中年・前期高齢者・脳卒中・心疾患で<140/90mmHg,後期高齢者で<150/90mmHg
2009年版までのガイドラインでは高血圧基準値(診察室血圧≧140/90mmHg)と降圧目標値(若年・中年者の場合,同<135/85mmHg)に乖離があった。この目標値は「できれば<135/85mmHgが望ましい」という意味で設定されたものだが,臨床現場での混乱を避けるため今回で改められた。これにより若年・中年者の降圧目標値は<140/90mmHgとなるが,その意図は降圧治療の緩和を促すものではない。
糖尿病合併患者の降圧目標については,厳格な降圧を支持するエビデンスがないとして2013 ESH/ESC高血圧管理ガイドラインでは<130/80mmHgから<140/85mmHgに, ASH/ISH2013,JNC8では<140/90mmHgに引き上げられた。しかし,欧米では脳卒中よりも心筋梗塞の発生率が高いのに対して,日本では逆に心筋梗塞よりも脳卒中の発生率が高い。脳卒中予防に対しては厳格な降圧の有効性が認められていることから,JSH2014の目標値は引き続き<130/80mmHgとされた。
5)妊娠高血圧の第一選択薬にCa拮抗薬を追加。授乳期に使用可能な降圧薬を記載
妊娠高血圧について,従来はメチルドパ(中枢作動薬)とヒドララジン(血管拡張薬),それでも管理できないやむを得ない場合としてラベタロール(αβ遮断薬)の保険適用が認められていたが,いずれも降圧作用が弱く,大きな課題とされてきた。2011年からCa拮抗薬ニフェジピンが保険適用として認められ,本ガイドラインでもこれが第一選択薬に追加記載された。
また2009年版では母乳移行性を考慮して降圧薬使用時の授乳は原則禁忌としていたが,NPO法人日本母乳の会や小児科学会からの要請を受けて検討し,国際的な視点で授乳が可能と考えられる降圧薬について記載された。
6)認知症合併高血圧の章を新設
高齢化に伴う認知症の増加を受けて認知症の章が新設されたが,エビデンスは少なく同患者に対する降圧目標,降圧薬について特別な言及はなされなかった。次回改訂までのエビデンスの集積が期待される。
■今後(次期改訂)の検討課題
ほかにも,次期改訂では「高血圧女性患者が妊娠した場合の降圧療法」「1日2回の家庭血圧測定で白衣高血圧や仮面高血圧の診断が十分か」「PWVやCAVIの血管障害やリスク予知因子としての位置付け」「周術期のβ遮断薬の位置付け」「ジェネリック医薬品の評価」などが検討課題であることがガイドラインに記載された。
■ガイドラインの推奨を外れる場合,カルテに記すことが大事
ガイドラインはその時点での標準的治療を示すものであり,医師の裁量を侵害するものではない。個別的治療のなかでガイドラインの推奨から外れることはあり得るが,「その場合,医師はガイドラインをよく理解していることが前提であり,理由や経緯をカルテに記載しておく(島本氏)」ことの重要性も言及された。
本ガイドラインは日本高血圧学会のウェブサイトにて全文(PDFファイル)のダウンロードが可能。書籍のご購入はこちら

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