高血圧患者は自身の疾患を深刻に捉えたり,生活習慣に取り組んだりする傾向が糖尿病患者よりも低いことがインターネット調査で示された。医師は高血圧患者に対して,より厳格にリスクを説明する必要がありそうだ。
同調査は塩野義製薬(株)が実施し,高血圧患者,糖尿病患者,高血圧・糖尿病合併患者各400例から回答を得たもの。自身の抱えている生活習慣病について「重症だと感じている」「深刻だと感じている」と回答した割合は糖尿病患者が約4割であるのに対して,高血圧患者が約2割。「命に関わる危険があると感じている」も5割に対して3割だった。一方で高血圧患者の65.3%は「治療は気楽にやればよい」と感じており,糖尿病(56.6%),糖尿病+高血圧(56.8%)よりも多かった。
この割合は治療の実態にも反映されており,高血圧患者は減塩への意識が高かったが,カロリー制限,アルコール制限,禁煙,運動についてはいずれも糖尿病患者よりも意識が低かった。「医師から『治療を中断してはいけない』『食事制限や運動療法をしなくてはいけない』と説明を受けた」や「自身の治療目標値を正確に知っている」と回答した割合も,高血圧患者のほうが低かった。糖尿病患者,高血圧患者ともに,目標値を正確に理解していると回答した患者ほど,治療に前向きに,しっかり取り組む傾向も認められたことから,疾患への理解度を高めることで,降圧目標の達成につながると考えられる。
片山茂裕氏 |
糖尿病患者にくらべて高血圧患者の理解が不足している原因について,片山茂裕氏(埼玉医科大学内分泌・糖尿病内科教授,埼玉医科大学病院 病院長)は「糖尿病の場合,医師は網膜症,腎症,神経障害の三大合併症のリスクを皮切りに心血管疾患,脳卒中のリスクが高まることも患者に伝える。長年言い続けてきたので,患者の意識も高まったのだろう。高血圧患者は絶対数が多いので,自分もそれほど珍しい病気にかかったわけではない,と捉えてしまうのかもしれない」と話す。「脅すわけではないが,高血圧患者さんにも心血管イベントの発症率が高まることを確実に理解してもらうことが重要」として,診療を通じて患者への意識付けに務めたいと述べた。
調査結果の詳細データはこちら
http://www.shionogi.co.jp/static/tcare_survey_plus1407.pdf