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[トピックス] 
グローバルヘルス・フォーラム2014
わが国に求められる世界の保健医療への貢献

来賓挨拶する小泉純一郎氏

2014年10月31日,長崎大学の主催により,「グローバルヘルス・フォーラム2014」が開催された。同フォーラムは,日本企業が手がける具体的な感染症対策や,海外における産学協同の最前線など,グローバルヘルスに関するさまざまな情報を発信するために開かれたものである。来賓として,首相在任中に「野口英世アフリカ賞」を創設した小泉純一郎氏,日本製薬団体連合会会長の野木森雅郁氏が挨拶し,ゲストとしてさだまさし氏が招かれた。また,基調講演として,熱帯医学・グローバルヘルスの領域で著名なロンドン大学衛生熱帯医学大学院学長のピーター・ピオット氏による「The need for partnerships to confront old and new global health」,住友化学株式会社理事の広岡敦子氏による「住友化学のオリセット®ネットによるマラリアの防除及び感染症対策」,特別講演として,参議院議員の武見敬三氏による「グローバルヘルスと日本の役割」が行われた。

グローバルヘルス研究の重要性

長崎大学長の片峰茂氏は,主催者挨拶のなかで,現在進行中のエボラ出血熱の流行を例にあげ,かつて途上国に限局していた感染症が今や世界全体を脅かす時代となったこと,グローバルヘルスはそのような状況を受け,世界の保健医療を包括的に理解するために近年用いられ始めた新しい概念であることを紹介した。また片峰氏は,グローバルヘルスの分野で世界的なリーダーシップをとる人材を育成する目的で,新しい大学院,熱帯医学・グローバルヘルス研究科を設置予定であると述べた。

エボラウイルスの発見者の一人でもあるピーター・ピオット氏は,途上国の経済発展,物流や人の移動の拡大により,疾病のリスクもグローバル化している現状を説明した。たとえば,かつてはぜいたく病とされていた糖尿病の有病率は,サウジアラビア,クウェートなど中東の国々で高く,世界の糖尿病有病者の80%は低・中所得国に属する。ピオット氏は,世界の疾病構造が大きく変化するなか,保健医療への取り組みとして,これまでの欧米諸国主体による感染症対策を中心とした活動から,より幅広い健康問題を先進国も途上国も同じ立場で考えることが必要であると述べ,グローバルヘルスという視点をもつことの意義を強調した。

グローバルヘルスにおける日本の貢献

武見敬三氏は,2030年には世界全体で高齢化が進展するとの予測を紹介し,安定した医療サービスの必要性が高まるなか,日本が各国の制度設計にいかに貢献できるかが,大きな課題であるとした。日本は,国民皆保険等の制度を通じ,すべての人が必要な医療を受けられる,世界でも有数の長寿社会となった。武見氏は,こうした日本の成功体験,また,高齢化先進国としてこれからの保健政策を発信していくことで,グローバルヘルスの課題解決に向け日本の役割を果たすべきと述べた。


長崎大学熱帯医学・グローバルヘルス研究科創設準備室長 有吉紅也氏

最後に,長崎大学熱帯医学・グローバルヘルス研究科創設準備室長の有吉紅也氏は,自らの経験を交え,研究科創設に至った経緯を語った。有吉氏はジンバブエ大学で研修医をしていた頃,エイズの大流行を目の当たりにして,医師として個々の患者の治療にあたるだけではアフリカを救うことはできないと,英国医学研究協議会で研究者になった。世界の一流の研究者たちと仕事をするうち,日本にある優秀な人材,素晴らしい技術や組織力をもった企業と,そうした研究者との連携の橋渡しをすることができればと考え,日本に帰国した。熱帯医学・グローバルヘルス研究科は,長年抱いてきた思いを実現し,世界の保健医療へより貢献するべく,学長に創設を提案したものである。ピーター・ピオット氏をはじめ多くの研究者にも協力を呼びかけた。同研究科では,ロンドン大学の研究者や学生と緊密な連携をとり,国際大学院を組織する。また,医師に限らず幅広い領域から学生を受け入れ,アジア,アフリカの保健医療現場で実習ができる環境も整備する。有吉氏は,企業などさまざまな人の力を借りながら,世界の保健医療に真に貢献できる拠点を作っていきたいと述べ,フォーラムを締めくくった。

先般,デング熱の国内感染がマスコミをにぎわした。熱帯の感染症が他人事では済まされない時代となった。長崎大学をはじめ,わが国のグローバルヘルスへの貢献が期待される。

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