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[トピックス] 
高コレステロール血症患者はコレステロール摂取量について考慮する必要がある
—米国におけるコレステロール摂取量制限撤廃に関わる発表に対し,日本動脈硬化学会が声明を発表

声明を発表する武城英明氏
(日本動脈硬化学会理事)

これまで,食事でコレステロールを摂りすぎると動脈硬化を起こして心血管イベントを発症しやすくなるとの考えから,摂取制限を心がけることが推奨され,一般にも広く認識されてきた。

しかし,2013年に米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)が「コレステロール摂取量を減らしても血中コレステロール値が低下するかどうか判定する証拠が数字として出せないことから,コレステロールの摂取制限を設定しない」とするガイドラインを発表。2015年2月に米国農務省から一般国民向けに発表されたレポートでも,食事中コレステロールの摂取と血中コレステロール値に明らかな相関を示すエビデンスがないことから,これまで推奨していたコレステロール摂取制限をなくすことが記載された。わが国の厚生労働省による「2015年日本人の食事摂取基準」でも,健常者において食事中コレステロールの摂取量と血中コレステロール値に相関を示すエビデンスが十分ではないことからコレステロール制限は推奨されていない。

これに対し,関連する断片的な報道が誤解を生んでいる懸念があるとして,5月1日,日本動脈硬化学会が声明を発表。「高LDL-C血症患者にも当てはまるわけではないことに注意する必要がある」と呼びかけた(編集部)。

そもそも,なぜ高LDL-C血症を予防・治療しなくてはならないのか?

血中コレステロールは全身に関与するが,血中LDL-C高値と狭心症や心筋梗塞など虚血性心疾患については明らかな相関関係が認められている。したがって,高LDL-C血症患者(LDL-C≧140mg/dL。境界域[120~139mg/dL]の場合も高リスク病態がないか検討し,治療の必要を考慮する必要がある)ではコレステロール摂取量について考慮する必要があるというのが日本動脈硬化学会の考えだ。

摂取コレステロールは高LDL-C血症を起こすのか?

血中コレステロールのうち食事由来のコレステロールは約20%であり,残りの約80%は肝臓で合成されている。細胞膜やホルモン,胆汁酸の原料となるか,一部は吸収されずに糞便中に排泄されるが,余ったコレステロールの多くは血液中に残り,わずかに血管壁などに沈着,あるいは細胞内に蓄積する。中性脂肪のようにエネルギー源として燃焼されるものではない。

古くから,食事で摂取したコレステロールのうち半分程度が体内に吸収されると言われてきた。近年の放射性同位元素を用いた研究によって,確かに平均して50%程度が吸収されていることがわかってきたが,同時に個人差が大きいことも明らかになってきた(J Lipid Res 1999; 40: 302)。すなわち,同じものを食べても,そのうち80%のコレステロールが吸収される人もいれば,20%しか吸収されない人もいるのだ。

また,摂取量と血中コレステロール値は直線関係ではなく,ある一定以上(これも個人差があるが)を摂取した場合は血中コレステロール値の上昇に上限がみられることも報告されている(Am J Clin Nurt 1986; 44: 299-305. Figure 2)。

遺伝的に血中LDL-C値が高い家族性コレステロール血症患者でも,摂取制限することにより血中濃度の低下が認められるが,このコレステロール摂取制限による血中LDL-C値低下も個体差が大きく,コレステロール摂取量と血中LDL-C値の関連を示すエビデンスが不十分である一因になっている。

実際にはどのような食事がよいのか?

具体的な食事療法として,日本動脈硬化学会は伝統的な日本食を推奨している。米国で推奨されているDASH食(Dietary Approach to Stop Hypertension)と同様に抗動脈硬化的であることが多くの研究で示されており,減塩に留意したうえでの日本食が勧められる。なお,海外でも人気の寿司,天ぷら,お好み焼きなどの「和食」ではなく「伝統的な日本食」である点には注意が必要だ。

高LDL-C血症患者がコレステロール値を低下させるためには?

高LDLコレステロール血症患者が食事療法を行う際の注意点としては,同学会は「飽和脂肪酸を総エネルギー比4.5%以上,7%未満摂取する」「トランス脂肪酸の摂取を減らす」「コレステロール摂取量を200mg/日以下にする」ことを推奨している。これらは超過してはいけない値ではなく目安となる平均摂取量であり,ときにはたくさん摂取しても,常日頃は抑えておこうと心がけることが大切だ。

また,脂質のみに留意するのではなく,食物繊維を多く含む大豆製品,海藻,野菜類を増やすなど,包括的な食事内容の改善が血中コレステロール値を低下させることも明らかになっている。食材の選び方や献立の工夫について,同学会の脂質異常症治療ガイドライン2013年版が参考となる。

なお,高値となった血中LDL-Cを減らすためには,コレステロール摂取のみを制限しても改善はほとんど期待できない。生活習慣,運動,食事などを包括的に修正することが重要であることを同学会は強調している。

 【関連書籍】
本:コレステロール -基礎から臨床へ-
コレステロール —基礎から臨床へ—
編集 寺本民生
  • 食事から摂取するコレステロール。体内で合成されるコレステロール。どのような代謝が行われているのか?
  • 動脈硬化の発症機序にコレステロールはどのように関わっているのか?薬物の作用機序や,臨床のエビデンスはどこまで明らかになっているのか?
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ライフサイエンス出版刊 ISBN 978-4-89775-267-9
A4国際判 298頁 定価(6,800 円+税)

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