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[トピックス] 
パソコン・スマホでバーチャル救命体験
AED・心臓マッサージを楽しみながら学べるサスペンスゲーム公開

 高校の探偵部部長「エイド」と幼なじみの渡瀬ココロは,福引きで当てた旅行で,辺境の有名な老舗旅館を訪れる。しかし到着して間もなく,女将の悲鳴が響き渡った......
 サスペンスドラマ仕立てのe-ラーニングWebコンテンツ「心止村湯けむり事件簿」は,日本循環器学会AED検討委員会と減らせ突然死プロジェクト実行委員会より,2016年2月1日に公開(http://aed-project.jp/suspence-drama/)。旅館のエントランスで突然倒れた男性の命を救うために,居合わせた人々とともに奮闘するという緊迫感あふれるストーリーで,場面ごとに適切な行動を選択したり,バーチャルに体験したりしながら進むゲーム形式となっている。
 ここでは,公開に先立って行われた記者発表の内容から,コンテンツ制作の背景や趣旨,とくに工夫を要したポイントなどを紹介する。

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日本循環器学会の記者発表のようす(1月29日)。左: 三田村秀雄氏(日本循環器学会AED検討委員会委員長/減らせ突然死プロジェクト実行委員会委員長),右: 石見拓氏(同 副委員長/事務局長)

一般市民のAEDや心臓マッサージによる救命

三田村秀雄氏(国家公務員共済組合連合会 立川病院 院長)

 わが国では毎日,心臓突然死で約200人が亡くなり,その1/3には目撃者がいる。AED(自動体外式除細動器)は,一般市民が使用できるようになってから10年を超え,急速に普及しているが,総務省消防庁の集計1)では,2014年に一般市民に目撃された心停止25,255人のうち,AEDによる除細動が実施されたのは1,030人(4%)にとどまる。ただ,一般市民がAEDで除細動を実施したときの1ヵ月後の生存率は50.4%,社会復帰率は43.3%で,一般市民により心肺蘇生が実施されなかった場合のそれぞれ8.4%,4.3%を大きく上回る。心停止で倒れた人の命を救うためには,AEDと心臓マッサージを迅速かつ的確に行える一般市民を増やすことが重要である。日本循環器学会AED検討委員会と減らせ突然死プロジェクト実行委員会は,無関心層や若年層にAEDや心臓マッサージに興味をもってもらうために,パソコンやスマートフォンで楽しみながら最後まで飽きないサスペンスゲーム型ウェブコンテンツを作成した。三田村氏は「ゲームでAEDや心臓マッサージを理解していただき,実際に心停止で倒れた人に遭遇したとき,救命に手を貸してもらいたい」と話す。

ストーリー展開にあわせた10の設問

石見拓氏(京都大学環境安全保健機構健康管理部門 教授)

 老舗旅館にひとりの男が倒れている。これは事件なのか,事故なのか。サスペンスゲーム「心止村(しんどむら)湯けむり事件簿」は,ストーリーの展開にあわせてQ1~10の設問に順に回答する形式で,正解したら次のステップに進む。Q1では「倒れている人を見つけたら?」に対して,「肩をたたいて大きな声をかけ,反応を見る」「安易に触らず,様子を見る」のいずれかを選択する。Q2では反応がないときの対応が問われ,Q3では画面の中からAEDの設置場所をみつける。Q4「あえぐような呼吸を確認したら?」,Q5「胸骨圧迫はどこを押す?」と続き,Q6では胸骨圧迫の適切なリズムにあわせてスペースキーを押す。救命における時間の重要性を喚起するため,画面の右下に刻々と経過していく時間が表示され,最後まで緊張感が続くように工夫されている。
 石見氏は「eラーニングとして作成したので,問題を解きながらAEDや心臓マッサージを学んでもらうことと,サスペンス仕立てのストーリーで興味を持続させることのバランスを考慮し,さらに救命に要する時間も重要な要素として取り入れて編集した」と制作の意図を説明した。

心停止の救命率向上を目指して

 2015年10月に発表された日本蘇生協議会(JRC)心肺蘇生ガイドライン2015オンライン版では,心肺蘇生のために胸骨圧迫を行うことが推奨されている2)。石見氏は,心肺蘇生の専門家の立場から,胸骨圧迫の重要性を強調するとともに,胸をどの程度強く押せばよいのか,実際に講習会や学校で経験してもらえるような情報を提供していくと述べた。三田村氏も「これまで関心がなかった層にも,まずゲームによりAEDや心臓マッサージに興味を持ってもらい,これを機に蘇生講習会への受講を促すとともに,市街地や公共施設でのAEDの設置場所がすぐにわかるようにして,心臓突然死を減らしていきたい」と,今後の救命率向上への取り組みにも言及した。


サスペンスゲーム「心止村(しんどむら)湯けむり事件簿」
http://aed-project.jp/suspence-drama/

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