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[トピックス] 日本循環器学会 第17回プレスセミナー
(2016年2月5日(金)・東京)
脂肪組織由来幹細胞を用いた血管病治療による下肢再生の可能性

テーマ:血管新生治療の現状と展望
[司会]南野 徹(新潟大学大学院医歯学総合研究科循環器内科学 教授)
[講演]柴田 玲(名古屋大学大学院医学系研究科先端循環器治療学寄附講座 准教授)


柴田 玲 氏

皮下脂肪は痩身目的で吸引され,大量に廃棄されているが,現在,皮下脂肪から採取した脂肪組織を血管病治療に用いる研究が進められている。

日本循環器学会 第17回プレスセミナーで,名古屋大学大学院医学系研究科先端循環器治療学寄附講座 准教授 柴田玲氏より「脂肪が下肢切断を救う—脂肪組織を用いた血管病治療の最前線—」の講演が行われ,脂肪組織由来幹細胞を用いた重症虚血肢に対する血管新生療法が紹介された。

この治療法は,患者の皮下脂肪から脂肪組織を採取し,細胞遠心分離器により分離された脂肪組織由来の幹細胞を調整して,筋注法で下肢に移植するものである。臨床応用における幹細胞の優位性として,麻酔下に皮下脂肪組織から大量に採取が可能で低侵襲であること,患者自身の脂肪細胞由来であるため安全性が高いこと,幹細胞の分離・調整が2時間程度と迅速に行われること,などがある。

下肢の難治性潰瘍の治療には,内服薬や外用薬による薬物療法などが行われているが,重症化して壊死を起こすと切断となる場合もある。柴田氏は,これまで「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」(再生医療新法)に基づいて実施した重症虚血肢に対する血管新生療法で,血流の改善を示唆する所見が示され,切断する前の治療選択肢の一つとなる可能性があると語った。

現在,再生医療新法に基づき,国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)の再生医療実用化研究事業として,「ヒト皮下脂肪由来間葉系前駆細胞を用いた重症虚血肢に対する血管新生療法」について,名古屋大学医学部附属病院を中心に多施設共同臨床研究が計画されており,今後の研究成果が期待される。


詳細は,Therapeutic Research vol. 37 no.4(4月刊行)に掲載予定。

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