2017年3月17~19日に開催される第81回日本循環器学会学術集会にさきがけて,2月28日にプレスカンファレンスが行われた。その内容を紹介する。
■テーマは「次世代へつなぐ循環器病学」
2016年は第80回の節目であったことから,日本循環器学会の歴史を総括する学術集会であった。2017年は「次世代へつなぐ循環器病学」というテーマを掲げ,若手の研究者や臨床医がこれまで築かれてきたものを受け継いで,新しい循環器医療へつなげるきっかけとなる学術集会となることが期待されている。
さらに,今回は演者,座長,講演者に多くの女性を選定したことも特徴である。例年海外の著名な基礎・臨床医学者を招いて行う美甘レクチャー(3月18日)では,Christine E. Seidman氏(Harvard Medical School,米国)が講演を行う。Seidman氏は肥大型心筋症が遺伝性の疾患であることを世界ではじめて実証した研究者で,研究室には日本から多くの研究者が留学している。
また,国内の著名な研究者によって行われる真下記念講演(3月18日)では,澁谷正史氏(上武大学学長)が血管内皮の研究を紹介する。山岸正和氏(金沢大学医学部循環器病態内科学教授)による会長講演(3月18日)では,今回のテーマ「次世代へつなぐ循環器病学」を取り上げ,日本における循環器医療の研究や臨床は今後どうあるべきかを論じる予定である。
■特別講演の注目のトピックス
特別講演には,30名以上の海外演者が招へいされている。話題のトピックスとして,非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)の試験に携わったLars Wallentin氏(Uppsala大学,スウェーデン),世界で初めて大動脈弁狭窄に対する人工弁のカテーテル挿入を手がけたThierry Lefevre氏(Institut Hospitalier Jacques Cartier,フランス),コレステロールを低下させるヒトプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害薬の開発を指揮したEvan Albert Stein氏(Metabolic and Atherosclerosis Research Center,米国),遺伝子変異が疾患の発症に重要な役割を果たすことを発見したSekar Kathiresan氏(Massachusetts General Hospital,米国)の講演が注目される。また,海外で活躍する日本人研究者Kinya Otsu氏(King's College London,英国)は,自身の経験や研究成果を紹介する。
■会長特別企画
会長特別企画としては,同時期に大阪で開催される第42回日本脳卒中学会学術集会とのリアルタイムオンラインカンファレンスや,若者を心血管病から守る:金沢宣言への提言,次世代へつなぐ日本発の循環器基礎医学研究—循環器病学の歴史を変えた人々,疾患iPS細胞の臨床応用の現状と展開など,13におよぶ試みが用意されている。
■Late Breaking Clinical Trials
Late Breaking Clinical Trialsは新しい臨床指針にそって厳密に計画された介入試験で,抄録募集時点では出ていなかった結果が本集会で初めて報告される。澤芳樹氏(大阪大学心臓血管外科教授)によるカテーテル治療の初期成績(3月17日)や,南野哲男氏(香川大学循環器・腎臓・脳卒中内科教授)によるエリスロポエチンを用いた心不全治療(3月17日)が特に注目されている。