高血圧は脳心血管病の最大の危険因子であり,健康寿命延伸のためには高血圧の予防と血圧の適切な管理が重要であるが,高血圧有病者で血圧が140/90 mmHg未満にコントロールされているのは約1/4にすぎないと推計されている。そこで,日本高血圧学会では日本高血圧学会フューチャープランを作成し,その計画における地域医療創成の一環として『高血圧ゼロのまち』を目指す自治体を公募し,支援することを発表した。
伊藤 裕 氏 |
2007年のわが国の統計では,高血圧は喫煙に続き2番目に多い死亡数に寄与するリスク因子である。わが国は高血圧治療の先進国であるが,高血圧に対する治療が十分になされていないのが現状である。2017年の推計ではわが国の高血圧有病者は4300万人で,そのうち1400万人(33%)は自身が高血圧と認識しておらず,450万人(11%)が高血圧と認識しながらも治療を受けていない。
日本高血圧学会 理事長の伊藤 裕氏は,高血圧を減らすためにはまず高血圧であることを知ってもらうことが重要であり,社会全体で取り組んでいきたいと考え,日本高血圧学会フューチャープランの一環として『高血圧ゼロのまち』モデルタウンの募集を行い,支援することとなったと説明した。
野出 孝一 氏 |
2018年12月に「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中,心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」(脳卒中・循環器病対策基本法)が成立した。この基本法の要点の一つは循環器病の予防であり,心血管病の最大の原因である高血圧の治療は脳卒中・循環器病対策基本法の柱になると考えられる。「良い血圧で健やか100年人生」をスローガンに,高血圧の国民を今後10年間で700万人減らして健康寿命を延伸することを目的としている。
3本の柱として,①医療システム:生涯にわたる高血圧診療システム(ライフタイムケア)の構築,②学術研究:高血圧研究の推進と「みらい医療」の実現,③社会啓発:国民が血圧管理に自ら取り組む社会づくりを掲げている。日本高血圧学会フューチャープラン推進委員長 野出 孝一氏は,三つ目の社会啓発は,『高血圧ゼロのまち』モデルタウン募集にもつながり,脳卒中・循環器病対策基本法の成立を踏まえ,行政と連携して,地域特性に合った循環器病の予防等の推進のための施策や医療により,健康に寄与する街づくりを行っていきたいと抱負を語った。
日本高血圧学会フューチャープランタスクフォースC委員長 卓也 氏より,『高血圧ゼロのまち』モデルタウン募集についての説明が行われた。
わが国の高血圧が十分にコントロールされていない現状を踏まえて,日本高血圧学会ではこの状況を打破するため『高血圧ゼロのまち』モデルタウンを公募し,支援することとした。
方 法
自治体主導により全住民,特定健診対象者(40~74歳),職域集団,学校児童・生徒などを対象として,高血圧の啓発,血圧測定,健診受診勧奨,生活指導(減塩,運動,禁煙など)介入などを行い,可視化した指標をアウトカムとして「高血圧ゼロ」を目指す。
A. 取り組みの具体的内容(プロジェクト)案
B. 対 象
C. 介入内容
D. その他
原則として日本高血圧学会がプロジェクトメンバーとして加わり,企画,実施に対してアドバイスを行う。審査後決定したプロジェクトのアドバイザーについてはプロジェクトの主管団体と日本高血圧学会が相談の上,決定する。日本高血圧学会は「高血圧ゼロのまちモデルタウン」プロジェクトを後援し,企画策定と活動の助言を行う。
なお,日本高血圧学会は決定したプロジェクト実施にかかる資金提供はしない。
期 間
公募期間:2019年8月~2020年3月
活動期間:2019年~2025年(3~5年)
審査と公表
提出された申請書類を審査し,受理されたプロジェクトをHPで公開するとともに,学術総会やフォーラムで紹介,進捗状況報告を行うセッションを設ける。
活動期間終了時には,報告書の提出を依頼し,優れた成果が得られたプロジェクトについては,学会よりアワードを授与し,学術総会で受賞講演を行う。
氏は,各自治体の特徴を活かした取り組みを望み,プロジェクトを町おこしや地域創成につなげ,健康寿命の延伸以外の成果や波及効果がもたらされることを期待したいと締めくくった。
【問い合わせ先】
特定非営利活動法人 日本高血圧学会
事務局 モデルタウン募集係
〒113 - 0033 東京都文京区本郷3丁目28番8号 日内会館2階
電話03-6801-9786 Fax 03 - 6801 - 9787
学会HP内ページ:http://www.jpnsh.jp/topics/642.html
(Therapeutic Research 2019年8月号掲載)