国立循環器病研究センターは,3月24日,震災後に発生頻度が高くなると予想される循環器疾患について,医療者向けの直通電話(ホットライン)を開設し,循環器専門医による電話相談を受けることを発表した。
震災後に発生頻度が高くなる循環器疾患の一つとして,「たこつぼ型心筋症」があげられる。これは1990年に日本で初めて報告された疾患で,精神的な過度のストレスによって自律神経が極度に混乱し,心筋の一部が硬直して収縮しにくくなり,正常に血液を送り出すことができなくなる。2004年の新潟中越地震の直後に多数の発症が報告されており,とくに中年女性に多くみられた。
原因は明らかになっていないが,ストレスによる内因性のカテコールアミンの増加などが関与していると考えられている。突然の胸痛から始まり,狭心症,心筋梗塞などによく似た症状を呈する。冠動脈造影(正常冠動脈)と特徴的な左室造影所見で診断されるが,心電図での虚血性変化所見や心臓超音波検査により,狭心症や心筋梗塞との鑑別を最優先に行う必要がある。治療法は,ストレス要因の除去と安静である。予後に関しての明らかなデータはないが,新潟中越地震発生後の16例(男性1例,女性15例)の報告では,震災発生の平均5日後に胸痛や呼吸困難を主訴として発症した。治療後は深刻な心不全や致死性の不整脈の発生は認めず,発症から平均23日後に左室収縮能が改善し,全例が独歩退院した。
国立循環器病研究センターでは,たこつぼ型心筋症と,同様に震災後に発症が増えると予想される肺血栓塞栓症への対策や,循環器疾患についての相談を受け付けている。
また,日本心臓病学会は,循環器専門医によるメール相談を受け付けており,日本循環器学会では,循環器疾患の受け入れ応需情報を作成している。
各機関への連絡先は下記のとおり(医療者からの相談のみ受付)。
申し込み・報道問い合わせ先
(代表)06-6833-5012 (夜間・休日)06-6833-5015
国立循環器病研究センター 総務課広報係(内線8496)