[ニュースリリース] 2011 No.31
メディア向けに発表された最新ニュースのなかから,臨床に役立つ情報をお届けします。
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発表日 2011年7月1日
国立循環器病研究センター 東日本大震災の被災地での循環器病対策の提言

国立循環器病研究センターは,東日本大震災の被災地に対して適切で効果的な医療支援を実施するため,4月19~22日にかけて宮城県,山形県に調査チームを派遣した(関連記事)。そこでの調査結果をもとに,5月13日,被災地の循環器病を"押さえ込む"観点から,「高血圧症対策」と「循環器病診療体制の整備」についての第一回の対策提言を行った。

7月1日には,第二回の対策提言として「糖尿病対策の推進」と「保健衛生の観点でのケアについて」を発表した。

■糖尿病対策の推進
① 自己管理の推進:災害時の自己管理マニュアルの作成と配布
② ①では対応できない個別の事例に対する相談体制の構築
③ 被災地での糖尿病の診療体制の構築

■保健衛生の観点でのケアについて
① 保健衛生体制の整備と連携ラインの構築
② 循環器病抑制のためのヘルスケアの推進:運動の奨励,体重管理,禁煙,心のケア対策の推進

糖尿病は,脳卒中や心筋梗塞など動脈硬化が原因となる循環器病の発症の大きなリスクであり,不適切な管理による高血糖や低血糖は生命の危機にも直結する。そのため,被災地であっても適切な血糖管理が必要であるが,避難所での生活は心理的・身体的ストレスが多く,また,被災地ではインスリンや内服薬が散逸,不足するという問題も発生する。
こうしたリスクを低減するための「災害時の糖尿病自己管理マニュアル」を作成して配布し,自己管理のみでは対応できない事例に対する相談体制の構築を提言している。また,糖尿病専門医や専門看護師,薬剤師などで構成される糖尿病巡回診療チームを避難所・救護所へ派遣することの重要性も訴える。
患者側の備えとして,診療情報の保存や,薬剤の予備を分散保管しておくことや,緊急時のインスリン入手の連絡先を知っておくことが勧められている。現地のインスリン供給や医療に関する情報は,日本糖尿病学会日本糖尿病協会のホームページを参照のこと。

心のケアを含めて,保健衛生上の問題が避難所での循環器病の発症と悪化につながると考えられる。被災地での疾病抑制のためには,保健衛生環境の改善が不可欠であり,そのための体制の整備と連携ラインの構築を提案している。循環器病抑制の観点からは,生活習慣病やメタボリックシンドロームの発生,悪化を抑えるヘルスケアが重要である。また,禁煙していた方が喫煙を再開することもあるため,運動の推進と体重管理,禁煙指導,心のケア対策の推進が必要である。その対策として,電話相談などの相談窓口の活用も有効であるとしている(相談窓口については厚生労働省ホームページに案内を掲載している。)

【ニュースソース】
(代表)06-6833-5012 (夜間・休日)06-6833-5015
国立循環器病研究センター 総務課広報係(内線8496)
小林 良平(コバヤシ リョウヘイ)

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