脂質異常症治療薬として広く使われているスタチンに,卵巣癌の発生や進行を抑制する効果があることが動物実験で示された。慶応義塾大学医学部産婦人化学教室の小林佑介特任助教らのグループがClin Cancer Res誌に報告し,2015年6月24日にオンライン版に掲載された。
マウスへの経口投与,腹腔内投与で発生や進行を抑制
同グループはまず,卵巣癌が自然発生するトランスジェニックマウスに連日スタチンを経口投与し,卵巣癌の発生や進行が抑制されることを確認。またヒトの卵巣癌細胞を移植したマウスの腹腔内にスタチンを投与した場合も,同様に腫瘍の発生や進行が抑えられることを確認した。投与されたマウスにおいて,腎機能や肝機能への有害事象は認められなかった。
アポトーシスやオートファジーが関与か
さらに,ヒトの卵巣癌細胞にスタチンを添加して培養すると,その増殖が抑制されると同時に,細胞が膨化したり細胞内に空胞が形成されることから,アポトーシスやオートファジーというプログラム細胞死の関与が示唆された。スタチン投与によってアポトーシスやオートファジー関連の蛋白が高発現していることも,関連性を示しているものと考えられる。
また,スタチンはコレステロールを合成するメバロン酸合成経路の上流でヒドロキシメチルグルタリル補酵素A還元酵素を阻害するが,同合成経路の下流から枝分かれする経路に関与するファネシル転移酵素やゲラニルゲラニル転移酵素を阻害することで細胞増殖に対する明らかな抑制効果がみられたため,これらの経路が卵巣癌細胞の増殖に関与していることもわかった。
今後は至適用量やその適応を十分考慮したうえで,ヒトの卵巣癌の発生や進行を実際に抑制しうるかどうか検討することが期待される。
【ニュースソース・問い合わせ先】
慶應義塾大学医学部 産婦人科学教室
小林佑介特任助教
Tel: 03-5363-3819 FAX: 03-3353-0249
Email: kobax@a2.keio.jp
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