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[学会情報]米国心臓協会(AHA)学術集会2010
(2010年11月13日~17日 in シカゴ)
編集部が選ぶ注目トライアル
Late-Breaking Clinical Trials III
<Late-Breaking Clinical Trials III>
ACT Acetylcysteine for the prevention of Contrast-induced nephropaThy
冠血管造影法施行患者におけるアセチルシステインの腎アウトカム予防効果を評価する実践的多施設共同ランダム化比較試験
Comment: Dr. Raymond Gibbons   ACT:造影剤誘発性腎症はもはや無視できない問題

試験背景/目的 造影剤誘発性腎症は死亡および入院期間延長と関連する。高齢者や糖尿病患者では造影剤誘発性腎症のリスクが高く,高リスク患者は全体の9%~38%に及ぶといわれている。アセチルシステインは安全かつ低コストで投与法が簡易であり,広く普及している治療薬である。本試験は,冠血管造影法施行患者におけるアセチルシステインの腎アウトカム予防効果をプラセボと比較する,最大規模のランダム化比較試験である。

一次エンドポイントは,造影後48~96時間における血清クレアチニン値の25%以上の上昇。

11月16日のLate–Breaking Clinical Trialsにおいて,Otavio Berwanger(Sao Paulo Cardiac Hospital)がこの試験の結果を発表した。

試験プロトコール ACT試験には,ブラジルの46施設が参加。対象は,危険因子(>70歳,慢性腎不全,糖尿病,心不全または左室駆出率<0.45,ショック)を1つ以上有する血管造影施行患者。

アセチルシステイン群(1,172例。血管造影施行前と施行後,1200mgを1日2回,経口投与)とプラセボ群(1,136例)にランダム割付け。

試験結果 患者背景は,平均年齢はアセチルシステイン群68.0±10.4歳,プラセボ群68.1±10.4歳,女性38.0%,39.3%,慢性心不全15.4%,16.0%,糖尿病61.2%,59.7%,心不全9.9%,9.2%,ショック0.3%,0.2%,急性冠症候群35.8%,35.1%,冠動脈診断のための血管造影67.1%,68.7%,経皮的冠動脈インターベンション30.1%,28.5%,糸球体濾過量60.2 mL/分/1.73m2,61.4 mL/分/1.73m2

一次エンドポイント発生率は,アセチルシステイン群12.7%,プラセボ群12.7%であり,有意な群間差は認められなかった(相対リスク[RR]1.00,95%信頼区間[CI] 0.81~1.25,P=0.97)。

30日後までの死亡または透析(RR 0.97,95%CI 0.57~1.66),全死亡(RR 0.93,95%CI 0.53~1.64),透析(RR 0.97,95%CI 0.20~4.80),心血管死(RR 0.97,95%CI 0.51~1.85)のいずれにおいても有意な群間差は認められなかった。また,糖尿病の有無,性別,年齢,血清クレアチニン,造影剤のタイプによるサブグループ解析を実施したが,いずれにおいても有意な群間差はみられなかった。

有害事象発生率はアセチルシステイン群(7.6%),プラセボ群(7.0%)で有意な群間差なし(P=0.61)。アセチルシステイン群の発生率が有意に低かったのは嘔吐のみ(0.3%,1.2%,P=0.01)。

DiscussantのBrahmajee K. Nallamothu氏(University of Michigan)は,「血管造影誘発性腎症の予防においては,周術期における腎毒性薬剤の使用を避け,適切なハイドレーションを実施し,いかなる造影剤も最小限に用いるべきであり,アセチルシステインのルーチンの使用は行うべきではない」と述べた。

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