Halperin氏に電話インタビューにこたえてもらった(写真は2009年欧州心臓病学会会場・バルセロナにて撮影) |
今回のAHAで発表されたRE-LY試験の後付け解析は,INR至適範囲内時間(TTR)レベルとアウトカムの関連性について,ダビガトランとワルファリンを比較したものでした。この試験には44ヵ国が参加し,TTRレベルは国によって大きく異なっていました。最小値は約41%,最大値は約78%でした。スカンジナビア諸国,とくにスウェーデンにおいて,INRコントロールレベルが良好な例が多くみられました。
こうしたワルファリンの有効性のばらつきは,過去の臨床試験でもみられていますし,とくに日常臨床と同じ方法で投与されるオープンラベル試験ではよくみられることです。ワルファリンはINRレベルが2~3のときにもっとも有効ですが,RE-LY試験での平均TTRは約64%でした。また,本試験への登録後,初めてワルファリンを服用した患者よりも,試験登録前からワルファリンを服用していた患者のほうがTTRレベルが良好という特徴もみられました。
今回の後付け解析に際して,施設ごとのTTRレベルではなく,各患者のTTRレベルに基づいて解析を行うべきではないかという議論もありました。しかし,統計的に困難であるだけでなく,心房細動患者の予後は抗血栓療法の妥当性以外にも,血圧コントロールや他の心血管リスク因子などによっても異なってきます。そこで今回は,施設ごとのTTRレベルにて解析が行われました。
本解析の結果から,ワルファリンのTTRレベルに関わらず,ダビガトランとワルファリンの有効性に差はないことが示されたといえるでしょう。
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RE-DEEM試験では,心筋梗塞後の標準的抗血小板治療法であるアスピリンとクロピドグレルの2剤併用療法を受けている急性冠症候群患者を対象として,ダビガトランの追加を検討しました。
もっとも重要なのは,3剤併用でも出血リスクが低かったことです。急性心筋梗塞患者を対象に,アスピリンとキシメガトラン(経口トロンビン阻害薬)の併用を検討したESTEEM試験 [循環器トライアルデータベース] の結果とは異なり,本試験ではダビガトランの追加は虚血イベントに明確な有効性を示すことはできませんでした。しかし,これらは早期の探索的試験ですので,アウトカムについては確かなことはいえません。
心房細動患者を対象としたRE-LY試験では,少数の患者において心筋梗塞が増加したことが議論となりました。ですから,RE-DEEM試験における出血に関する安全性の結果は重要なものです。しかし,まだエビデンスが十分ではありませんので,こうしたタイプのトロンビン阻害薬が,急性冠症候群患者における抗血小板薬併用療法に追加されるべきか,さらなる検討が必要です。