「AHA2008:編集部が選ぶ注目トライアル」に取り上げたI-PRESERVEのサブ解析が発表された。
I-PRESERVEは左室駆出率の保持されている心不全(HF-PEF)患者において,イルベサルタンの有用性を検討した試験で,参加者は4,000例を超える。今回発表されたのは,この大規模なコホートにおいて,HF-PEF患者の予後予測因子と死亡パターンを検討したサブ解析2件である。ここでは,この2件について発表概要を紹介する。
左室駆出率(EF)が保持されている心不全(HF-PEF)は決してまれな疾患ではなく,心不全の約半数を占め,死亡や合併症罹患とも関連が深いことがわかってきた。しかし,予後に影響を与える因子については,まだよく知られていない。そこで,I-PRESERVEの研究グループは,I-PRESERVEのコホートを用いて,HF-PEFの予後予測因子を調査した。
まず全参加者のデータより,背景因子が予後に与える影響を解析し,予後予測因子の候補を選出した。つぎに,その候補因子に関するデータがすべてそろった2,563例において,さらに詳細な調査を実施した。
その結果,HF-PEF患者の一次エンドポイント(全死亡+心血管疾患による入院)発生率は35%,うち約3割を全死亡が占めることがわかった。さらに,一次エンドポイント,全死亡,心不全関連アウトカム(死亡,入院)のいずれに対しても,「NT-proBNP」,「年齢」,「糖尿病」がとくに強力な予後予測因子であることが示された。
左室駆出率(EF)が低下した心不全(HF-REF)患者における死亡のパターンはよく知られているが,EFが保持されている心不全(HF-PEF)については,詳しくわかっていない。そこで,I-PRESERVEの研究グループは,I-PRESERVE試験参加者の死亡例のデータを解析し,死亡パターンを調査した。
I-PRESERVE試験追跡時の死亡は881例。もっとも多かったのが,心臓突然死(26%),つぎが心不全による死亡(14%)で,心血管死亡全体で60%を占めた。この結果をHF-REFを対象にした試験と比較したところ,HF-PEFとHF-REFでは死亡パターンは異なり,HF-PEFのほうが非心血管死亡の割合が高いことがわかった。また,I-PRESERVEの本試験の割付け(イルベサルタン群とプラセボ群)による比較も行ったが,群間に死亡パターンの違いはみられなかった。